ME&YOU 12月号より

冬のお風呂にご注意

特定・特別医療法人福島厚生会  
福島第一病院
心臓血管外科科長
中尾 雅朋


冬のお風呂にご注意

 

62 歳の主婦です。先日近所のお婆さんが入浴中に具合が悪くなり、 亡くなられました。 自宅にも高齢者がいるので不安です。

 厚生労働省の人口動態統計年表に よると 、平成 19 年度の浴槽内での溺死及び溺水は 3,253 件にものぼり、その約 60 %は 65 歳以上の高齢者でした。また、入浴を契機として具合が悪くなり死亡される方は年間 1 万から 1 万 4 千人にものぼると推測されています。つまり交通事故死(全国で 5,744 人 平成 19 年)よりも多い方が、入浴を契機として亡くなられている ことになります。

 

高齢者の入浴、特に冬場の入浴は ひかえたほうがよいのでしょうか?

 その様なことは決してありません。入浴が健康にもたらす効果・効能は枚挙に暇が ありません。 問題はその方法なのです。

 冬場の寒い脱衣所、浴室では血管が収縮し急激な血圧上昇が誘発されます。その後の入浴にて血管は拡張し血圧は下降します。又、入浴中は腹部から下肢を中心として水圧が掛かり心臓に戻る血液が一気に 増えます。 一方、湯船から立ち上がる際には今度は血液が下半身に集まり、起立性低血圧が誘発されます。 例えると 、自転車の運転中、右にハンドルを切ったかと思うと急に左にハンドルを切るといった無茶なことを知らないうちに身体に強いているということなのです。更に、 日本 においては、肩まで浸かる入浴スタイルが一般的であること、高齢者ほど熱い湯を好み、長湯の傾向があることも問題です。2℃以上の急激な体温上昇は血液凝固能の異常を引き起こし、血管閉塞の危険が高まるとの報告があります。また、過度の長湯は脱水ならびに体力の消耗を招きます。

 入浴関連死に高齢者の占める割合が多く、その死因の一位が心臓死(心筋梗塞など)、次いで脳血管障害(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血など)であることが御理解頂けると思います。

 

実父ですが、高血圧があり以前に心筋梗塞も起こしています。どのようなことに注意すればよいでしょうか?

体に負担が掛かる入浴法は避けるということです。

1)入浴前後に水分を補給し脱水にならないようにする。2)脱衣所や浴室内をあらかじめ暖めておく。3)心臓病等を指摘されている方は半身浴とする。あるいは思い切ってシャワー浴のみとする。4)熱い湯は避け、ぬる目の湯( 38 ℃から 40 ℃)で入浴し長湯はしない。5)湯船から出る際には急に立ち上がらない。6)飲酒後の入浴は控える。入浴直前の降圧薬の内服には注意する。(くわしくは医師に相談ください)等があります。

加えて、家人が異常に気付きやすい時間帯に入浴して頂くこと、入浴前に入浴者が家人に声を掛けるのも重要なことかと思います。

何より大切なことは、入浴中不自然な息苦しさ、めまい、動悸、あくび他を自覚 した際 、湯あたりだと簡単に自己判断しないでください。必ず医療機関にてご相談ください。