ME&YOU 10月号より

ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死

特定・特別医療法人福島厚生会  
福島第一病院
歯科 副部長
阿部 守明


はじめに

今回はビスホスホネート系薬剤(以下 BP と略す)によるがんの骨転移治療や骨粗鬆症治療に抜歯等の要因が関連して発生すると考えられる疾患、 BP 関連顎骨壊死(あごのほねの壊死)について紹介します。この疾患が 2003 年米国で始めて報告されて依頼、日本でも同様の症例が報告されています。医科で処方される BP が関連するため、歯科だけでなく、今後さらに医科・歯科連携を強めながら予防・治療にあたる必要があります。まだ日本ではこの疾患の詳細なガイドラインも作られていない段階ではありますが、その一端について情報提供したいと考えます。

BP の投与を受けている方が、抜歯後に起こることがある顎骨壊死、骨髄炎(以下 BP 関連顎骨壊死と略す)について

BP の投与を受けている方の中には、抜歯などの口腔外科的な処置を受けると、歯を抜いた部分の穴が埋まらず骨が露出したり、粘膜に潰瘍ができて、顎骨が腐ったり、痛みや腫れや膿が出て炎症が広がったりする顎骨壊死、骨髄炎がおこることがあります。

1)どのような方が BP を投与されているのか ,

@ ) 中・高年の女性で閉経後・加齢による骨粗鬆症と診断され方;治療薬の50%に BP 経口剤が使われています。

A ) 膠原病、リウマチなどの自己免疫疾患の方;長年ステロイド療法を受けると、骨が減少するいわゆるステロイド性骨粗鬆症がおこるので BP 経口剤が使われる場合があります。

B ) がん治療中の方;乳がん、前立腺がん等の悪性腫瘍の骨転移、高カルシウム血症、多発性骨髄腫の治療薬として BP 注射剤が使われることがあります。

* 現在国内で販売されている BP

* BP 経口剤の製品名

:ダイドロネル、フォサマック、ボナロン、アクトネル、ベネット

* BP 注射剤の製品名

:アレディア、オンクラスト、テイロック、ビスフォナール、ゾメタ

PB 関連顎骨壊死が起こる理由と現状について

『なぜ、 PB であごの骨だけに壊死が起こり、他の全身の骨には壊死が起こらないのか』については、まだはっきりわかっていません。エビデンスはありませんが BP が歯槽骨に高濃度に蓄積すること、 BP の口腔粘膜への毒性や血管新生抑制作用、感染しやすい環境、長期にわたる薬剤の投与や、がんに付随する免疫抑制などの複合的要因により起こるものと考えられています。

現在までわかっている主なことをまとめると、@ PB 関連顎骨壊死は、 BP 注射剤の方が BP 経口薬に比べて高い頻度で起こるものの、 BP 経口剤でもおこることがある。A抜歯などの歯科手術を行うと PB 関連顎骨壊死がより起こりやすくなる。Bあわない入れ歯の使用による潰瘍から発生することもある等です。

最後に一旦 PB 関連顎骨壊死を引き起こすと治癒しにくく、治療が困難になります。これを未然に防ぐためにも、常に口腔内を清潔に保ち、定期的な検診・デンタルケアで機能的に健全な歯を維持できるようにしましょう。