ME&YOU 8月号より

甲状腺のしこり

特定・特別医療法人福島厚生会 
福島第一病院
副院長
土屋 敦雄


甲状腺のしこり

Q .最近、検診で甲状腺のしこりを指摘されました。
A.甲状腺は気管の前面にある蝶の形をした臓器で甲状腺ホルモンを分泌する大事な臓器です。甲状腺の病気にはホルモンの異常(内分泌異常)を来す疾患と腫瘍性疾患に大別されます。内分泌異常を示すバセドウ病や橋本病は甲状腺全体が原型をとどめながら大きくなります。これに対して腫瘍性疾患は甲状腺の一部が“しこり”となります。外科治療の対象になるのは主に腫瘍性疾患です。

Q .腫瘍にはどんなものがあるのか?
A.良性腫瘍と悪性腫瘍があります。前者には濾胞腺腫、嚢胞、腺腫様甲状腺腫などがあり、悪性のものには乳頭癌や濾胞癌が代表的なもので、これらは分化癌といわれます。悪性腫瘍の中に未分化癌という発症してから約半年で死亡してしまう癌も稀にみられます。しかし日常臨床にて触れる甲状腺のしこりの殆どは良性疾患です。

Q .良性疾患の中では何が多いのですか?
A.甲状腺腺腫が一番多くみられます。これは検診などでみつかるような小さいものや、明らかに前頚部に突き出たものまでいろいろあります。腺腫のしこりの表面はいわゆる“くりっ”とした感じに触れます。鏡で自分の喉をみると、何かを飲み込む時にその「しこり」が動くのがわかります。

Q .甲状腺癌のしこりは硬いのでしょうか。
A.甲状腺癌の 90% は乳頭癌といわれているもので、この腫瘍は不整形で、硬く触れます。乳頭癌の殆どは触診で硬く触れ、穿刺吸引細胞診(腫瘍に針を刺して、組織の一部を取り、顕微鏡で調べる)にて診断がつきます。

Q .濾胞癌の診断も同じですか。
A.触診にては濾胞癌は濾胞腺腫と同じような所見を呈し、両者を区別するのは極めて困難です。濾胞癌の診断は細胞診でも診断できず、腫瘍を外科的に摘出して顕微鏡でしらべて腫瘍の被膜浸潤や脈管浸潤があるものが癌とされています。しかし濾胞癌の頻度は濾胞性腫瘍(濾胞癌+濾胞腺腫)の約1 ~ 3%といわれて、稀なものです。

Q .濾胞腺腫は濾胞癌の前触れなのでしょうか?
A.現在のところ濾胞腺腫は濾胞癌の前癌状態とは考えられません。ですから濾胞腺腫の診断がつけば、血液所見、検査所見、腫瘍の大きさなどから総合的に判断して手術をするかどうか決定します。

Q .嚢胞とはどんなものでしょうか
A.甲状腺腺腫の内容物が変性して、液体状になりチョコレート色や茶褐色の内容液を有するしこりを嚢胞といいます。これは注射針を刺して内容物を吸引すると一旦しこりは消失します。しかし嚢胞のまわりの細胞が液体を分泌する能力があるので、また数ヶ月のうちに大きくなる可能性があります。

Q .甲状腺腫瘍は食べ物と関連がありますか?
A.あきらかな関連はありません。ただ濾胞癌の発生率は一般にヨード不足地域には頻度が高いといわれています。日本人は海草などのヨードを含む食べ物を多くとりますので、発生率は低いとされています。

Q .甲状腺癌の治療はどうするのですか?
A.甲状腺癌は進行が遅く、かなりの長い期間にわたり大きくなると考えられます。基本的には手術による治療を行います。早期に見つけ、手術すれば、甲状腺癌で命を落とすことはきわめて少ないのです。