ME&YOU9月号より

ハチ刺されに治療
特に気をつけたい全身症状 発症したら必ず診察を受けましょう

特定・特別医療法人福島厚生会
福島第一病院
外科科長
清野 景好


ハチに刺されると、ほとんどの例で刺されたところの発赤と疼痛だけですが、中には急激に血圧が低下し、意識がもうろうとなったり、嘔吐などの消化器症状を呈する重症な症例もあります。ハチ刺されは子供からお年寄りまで、身近に起こり、症状も軽症から重症までさまざまです。ハチ刺されについて少し知識を持っているだけで、すばやく対応でき、また、過剰に大騒ぎすることもなくなります。
ハチの種類;世界中でハチは13万種、日本には5000種いるといわれていますが。大半はヒメバチやコバチという、他の昆虫に寄生する小型のハチで、農作物や林業上の害虫を退治する天敵です。人を攻撃したり、刺して問題となるのはごく一部のハチで、スズメバチ類約10種とアシナガバチ類約10種のあわせて約20種ほどです。
ハチ刺されによる症状;ハチに刺されると、刺された所に激しい痛みがはしり、その後、1週間ほど赤く大きく腫れる。これを局所症状といいます。ハチの針からハチ毒が皮膚が注入され、このハチ毒の成分であるヒスタミン、セロトニン、カテコールアミンなどが痛みを感じる神経を刺激するためです。とくに、セロトニンはヒスタミンより強い痛みを起こし、これを多量に含むスズメバチやアシナガバチに刺された場合、ほかのミツバチなどに刺されたときより、より強い痛みを感じます。一方で、刺されると直ぐに気分が悪くなったり、吐き気がするなど、刺された所だけでなく、体中に症状が広がる場合があり、これを全身症状と言います。全身症状はさらに二つに分けられ、即時におこる全身症状と、遅れておこる全身症状とがあります。とくに、急におこる全身症状にもっとも気をつけなければいけません。
急におこる全身症状;全身に症状が生じるのはハチに刺された直後からで、ハチさされによる死亡者の多くは10分から15分の間に死亡しています。この症状をさらに詳しく分けると、次ぎのようになります。
 (軽い症状)刺された所以外に赤く腫れ(蕁麻疹)、飲酒をした時のように全身が赤くなる、全身に痒みがおこる、なんとなくだるく、苦しいといった症状。この程度であれば治療に急を要しません。
 (中くらいの症状)上記の症状に加えて、喉がつまったような感じがして、胸が苦しくなり、口が渇き、口の中がしびれたような感じがする。下痢をしたり、吐き気や嘔吐をもよおしたりする。
 (もっと重症)息をするのも苦しくなり、物がのみこめなくなる。声がしゃがれて、目がみえなく、耳が聞こえなくなる。全身の力がぬけ、その場にうずくまり、意識がはっきりしなくなる。
(さらに悪化)尿や便を失禁したり、手や足にけいれんをおこしたりする。意識はなくなり、血圧は下がり、脈はふれなくなる。この状態になると、一刻も早く処置を開始しないと、死亡してしまいます。死亡の多くは上気道の浮腫による窒息死です。この一番症状の重い状態をアナフィラキシーショックといい、即時型アレルギー反応によるものです。
ハチさされの治療;ハチさされは多くの場合局所の疼痛、発赤腫脹だけで、抗ヒスタミン軟膏やステロイド軟膏を患部にぬり、冷湿布をします。症状によっては抗ヒスタミン剤やステロイド剤を内服することにより、普通の虫刺されと同様に数日で治癒します。一方、全身状態を伴った例では、その重症度により、酸素吸入や抗アレルギー剤やステロイド剤の点滴静注、血圧低下例に対しては、昇圧剤の投与も必要になります。局所症状だけであれば、放置しておいてもかまいません。しかし、全身症状が発症した場合は近くの病院で診察をうけるようにしてください。 【プロフィル】 せいの清野かげよし景好。青森県出身。 滋賀医科大学、弘前大学大学院卒後、南陽市立総合病院、弘前大学医学部附属病院第二外科、藤崎町国民健康保険藤崎病院、公立金木病院を経て、平成19年4月より福島第一病院外科科長として勤務。 日本外科学会外科専門医。