ME&YOU8月号より

夏にも多い急性心筋梗塞
暑い時期は脱水に陥りやすく、血液の粘調度が上がることと関係

特定・特別医療法人福島厚生会
福島第一病院
心臓血管外科科長
中尾 雅朋


◆78歳の男性です。疲労感を覚え、病院を受診したところ急性心筋梗塞との診断を受けました。
 心筋梗塞とは、心臓の筋肉を栄養している血管(冠状動脈)が閉塞し、心筋に壊死が起こる状態を言います。脳梗塞等他の血管病同様、冬場に多いと思われがちですが、夏場にもう一つの発症のピークがあります。夏場には脱水に陥りやすく、血液の粘調度が上がることと関係があると言われています。  

◆心筋梗塞といえば胸痛や胸が締め付けられるという症状があると思うのですが?

 自覚症状として、胸痛84% 呼吸困難が6% 意識障害が2% 動悸が0.4%と報告されています。しかし、肩こりや上腕部のだるさ、下顎の違和感を訴える方もいらっしゃいます。更に糖尿病患者様に多いのですが、無痛性心筋梗塞といい、自覚症状が全く無い場合もあります。  
◆高血圧と糖尿病で治療を受けていて、比較的血糖値も血圧も落ち着いていたのですが?
 高血圧・糖尿病・高脂血症(高コレステロール血症)・肥満・喫煙が心臓の筋肉を栄養している血管(冠状動脈)に動脈硬化を引き起こし心筋梗塞の発症を優位に上げることは知られています。受診時には正常血圧でも高圧薬内服前には異常な高血圧を認める方がいます。隠れ高血圧、或いは仮面高血圧と言われています。この高血圧時に血管障害を引き起こすこともあり、注意が必要です。 糖尿病コントロールの指標として、ヘモグロビンA1c(2・3ヶ月前の血糖の平均値を示す)等が用いられます。これらの値が正常値であるにもかかわらず、異常な食後高血糖を示す方もいます。また、空腹時と食後血糖値の上下の幅の大きさと血管障害の関係を指摘する研究報告もあります。いずれにせよ、一つの指標だけではそれらがコントロール良好であったかは単純に評価できない面もあります。  
閉塞している血管の場所をカテーテルで拡げて、金属の筒を入れて頂いたようですが?
急性心筋梗塞の治療は一般的に時間との戦いです。冠動脈が閉塞し、心筋に壊死が完全に起こる前に動脈を再開通させます。血管閉塞部に血の塊(血栓)を吸引するカテーテル(管)を挿入し、血栓を吸引します。次に風船(バルーン)の付いたカテーテルにて動脈を拡張します。更に拡げた動脈の部分に再度狭窄が起こらないようするために金属の筒(ステント)をできる限り留置します。

◆今後気をつけることはどのような事でしょう?
 1)再開通させた血管閉塞部が再び閉塞しないように血液を固まりにくくする薬(抗血小板薬・抗凝固薬)を医師の指示がある限り内服。   2)血圧・糖尿病等動脈硬化を引き起こす基礎疾患の治療をしっかりする。
 3)リハビリを勧めます。適度な運動は、心臓自身にも新生血管の増殖を促し虚血にたいしての耐用能を上げると言われています。 何より  も大事なことは、異常があれば直ぐに医師にご相談下さい。