ME&YOU12月号より

高齢者に対する心臓血管外科手術

合併疾患を考え負担の少ない手術で対応 術後は早期から離床に向けた訓練

特定・特別医療法人福島厚生会 福島第一病院 心臓血管病センター長
緑川 博文

世界一の長寿国
現在日本は世界一の長寿国であり、人口推計によると本邦の65歳以上の人口割合は19.6%、さらに75歳以上は8.7%であり、2000年の65歳以上17.4%からさらに増加傾向にあります。一言で高齢者とは?といってもその方の精神的肉体的状態によってさまざまですが、一応医学的には75歳以上と定義するのが妥当かと思います。近年心臓血管外科手術が必要となる疾患をもつ高齢者の患者さんが激増しております。今回当センターでより高齢な患者さんをいかに安全に治療しているかの取り組みをご紹介いたします。

高齢者の問題とは?
一般的には、現疾患に加え、脳血管疾患、呼吸器疾患、高血圧、高脂血症、糖尿病、腎機能障害などの合併疾患を有していることが多く、術後それらに起因する合併症が若年者に比し起こりやすく、手術成績を悪化させる主要因となります。また長期臥床による筋力低下や精神的活動の低下により長期の入院を必要し、手術が成功してもその恩恵を感じられない場合も少なくありません。

より負担の少ない手術
しかし、心臓血管疾患は放置すれば死に直結する場合が多いですから、高齢だからという理由で放置することはできません。したがって、当センターではより危険性が高い患者さんにより負担の少ない手術を積極的に取り入れています。以前もこの紙面で紹介しておりますが(それぞれ詳しくは以前の紙面をご参照ください)、狭心症に対しては心臓を止めないで動いたままで行うバイパス術、心臓弁膜症に関しては自分の弁をできるだけ温存する弁形成術や生体弁を用いた弁置換術、大動脈瘤に関しては胸や腹を切開することなくステントグラフトという人工血管を巻いた筒のようなものをいれて治療する手技、静脈瘤を含めた下肢血行障害に対してはカテーテルを用いた局所麻酔下での手術などを行っています。

術後の積極的リハビリテーション
高齢の患者さんは一般的に術後の回復に時間がかかります。当センターでは筋力低下や精神活動の低下によって寝たきりになることを予防するために、術後早期から専門のリハビリテーションスタッフがベットサイドにいって離床に向けた訓練を行い、離床ができたのちはリハビリ室で専門の器具を使用し筋力低下を予防し、早期の社会復帰を目指しています。

高齢だからといってあきらめない
最後になりますが、高齢だからという理由だけで病気から逃げないでください。大切なことはいくつになっても前向きに立ち向かう気持ちだと思います。当センターはそんな患者さんの手助けになれればと思っております。