ME&YOU11月号より

肺の生活習慣病 COPD

原因の90%はたばこ 喫煙し呼吸器症状のある人はご注意

特定・特別医療法人福島厚生会 福島第一病院 消化器科部長
柳沼 信久

 生活習慣病ではカロリーの摂り過ぎによる代謝症候群が代表ですが、喫煙による生活習慣病として近年COPD が注目を集めています。COPDとは慢性閉塞性肺疾患の英語の略語です。原因の90%がタバコなのでまさに生活習慣病といえます。

COPDとは
 COPD を理解するには肺の構造と機能を理解する必要があります。肺はフイゴ状の構造で呼吸筋の運動により膨張と収縮を繰り返して吸うときに外気を取込み吐くときにガス交換後の呼気を排出します。気管が肺に空気を出し入れする管ですが、肺内で次々に枝分かれして細くなり最終的には細かい球形の肺胞の集まったところに到達します。肺胞は数億個あり壁内を毛細血管が走り、流入した空気と毛細血管内の血液がガス交換を行います。酸素を取込み二酸化炭素を排出する重要な部分が肺胞です。
  長年の喫煙は細かく整った肺胞の壁の弾性繊維を破壊して肺胞が整然と分画された状態から分画が壊れて大きく膨らんだ状態に変えていきます。目の詰んだイギリスパンの表面のような有様がフランスパンの中味のような目の粗い構造になるわけです。目の粗い肺胞は表面積が減って酸素を取込む能力が著しく低下しますし、弾力を失って収縮出来なくなるために空気を充分に吐き出せなくなります。末梢の気道も充分に開かれなくなるために慢性の炎症がおこり痰が増えて気道壁が厚くなり空気の通過も悪くなり息切れや呼吸困難をひきおこします。

COPDの症状と経過
 COPD の典型的な経過をみてみましょう。若い頃からの喫煙の習慣があり、60代はじめに症状が出てきます。「かぜでもないのに咳や痰がでる」「少し歩いただけで息切れがする」などの症状が出ますが徐々に常時呼吸困難があるようになり、在宅酸素療法といって常に酸素を吸入していないと生活できない状態になります。
  様々な治療を行っても病状は進行して呼吸困難の急性増悪を繰り返して頻回の入退院が60代後半に必要になります。こうして70代には死亡することになります。在宅酸素療法が必要になると五年生存率が20%しかないという重大な病気です。

増加するCOPD
 COPDは1990年の世界の死亡ランキングでは第六位でしたが2020年には第三位になると予測されています。日本でも40歳以上の8.5%が推定患者で五百四十万人にのぼるといわれています。診断されないで悪化してからはじめてCOPD だったという事が非常に多いために喫煙者で呼吸器症状のある人は一度はCOPD を疑ってみる必要があるでしょう。

COPDの予防、診断、治療
 予防法はまず禁煙することです。発症しても禁煙によって病状の進行が減速し、治療に反応しやすくなります。診断には動的な呼吸機能をみるスパイロメーターや肺の目の粗さをみるヘリカルCT が用いられます。治療にはステロイドや気管支拡張薬の吸入剤などが使われ進行例には在宅酸素療法を行います。肺の感染防止に空気清浄器も有効です。いずれにしてもCOPDが増加するのを止めることが必要で、禁煙の重要性がわかります。