ME&YOU8月号より

胃切除後の大球性貧血

ビタミンB12の欠乏から発症。注射の治療で改善します。

特定・特別医療法人福島厚生会 福島第一病院 内科部長
板橋 孝

胃の手術をした方は貧血に注意!!
胃の手術をされた方は、貧血に注意が必要です。胃切除の手術後5年以上経ちますと、体内のビタミンB12が枯渇し、ビタミンB12欠乏からくる貧血になることがあります。 貧血の中で一番多い鉄欠乏性貧血は、赤血球が小さくなりますが、ビタミンB12欠乏の貧血は、逆に赤血球が大きくなり、大球性貧血と呼ばれます。採血を受けた場合、Hb(ヘモグロビン)は正常が12〜17位なのが貧血があると、小さい数値になります。さらに大球性貧血では、MCV(平均赤血球容積)の値が正常は90付近ですが、 110以上、120とか大きい数値になります。 ビタミンB12欠乏が進行しますと、貧血になるばかりでなく、急に白髪になったり、舌炎になったり、ひどい時には歩行障害になったりします。これは亜急性連合性脊髄変性症という名前がついていて、脊髄の変性が起きてしまうことから起因します。

輸血はしなくて大丈夫?
輸血はしなくて大丈夫です。 治療は、不足したビタミンB12を補うのですが、内服では効果がありません。筋肉注射又は静脈注射が必要となります。ビタミンB12は、胃の壁細胞から胃液中に分泌される内因子と結合して、回腸から体内に吸収されます。胃切除をした場合、ビタミンB12を経口的に摂取していても、胃が無いため内因子も分泌されず体内には吸収されないのです。よって、経口的にではなく、注射でというのが治療のポイントになります。

飲み薬でなく注射なのね?!
そうです。最初は毎日連日で3週間位、後は1か月毎で大丈夫です。 胃切除してなくても、萎縮性胃炎がひどい場合にも、内因子の分泌が障害されて、ビタミンB12欠乏が起こり、大球性貧血になります。これは悪性貧血と名前がついていますが、ビタミンB12を注射すれば治癒しますから、悪性ではありません。医学用語として悪性貧血と名前がそのまま残っているのです。

悪性貧血と言われても心配しなくていいんですね?
そうです。ビタミンB12の注射で良くなるので、心配しなくて大丈夫です。

その後はどんな経過になるの?
ビタミンB12の注射を続けると、大球性貧血が改善します。MCVが正常に近くなってきます。しかし、その後逆に小球性貧血になることがあります。これは、骨髄での造血が亢進するために、赤血球の材料である鉄の供給が需要に追いつかない為に鉄欠乏性貧血になるのです。この場合には、鉄剤を途中から内服すればいいのです

鉄剤は注射でなくて大丈夫ですか?
はい、鉄は胃切除しても吸収は問題ありません。 注射でなく内服で大丈夫です。

最後に
以上、胃を手術された方で、立ちくらみ、フラフラする、顔色不良等の症状がありましたら、医療機関を受診なさってみて下さい。