ME&YOU診察室のコーナー12月号より

年末年始の生活の留意点―お酒との付き合い方

急性膵炎が増える時期 アルコールの過剰摂取は避けよう

特定・特別医療法人福島厚生会
福島第一病院 消化器科部長 柳沼 信久


 お正月というのはえてして飲 みすぎ食べすぎで体調を崩し たり様々な不調の原因を作り やすい時期です。膵臓におこ る急性膵炎という病気をご存 知でしょうか?

お酒と急性膵炎

お正月になるともともとお酒が好きな人の中にはご馳走を食べて、毎日大酒を飲んで寝ているだけという生活パターンになってしまうひとがいますが、こういう場合に増えるのが急性膵炎です。急性膵炎は一年中発症がみられる病気ですが、お正月のアルコール漬けの生活が原因で発症した場合には重症化しやすいのが特徴です。お正月でなくても五月の連休などのように休みが続いて同じようなパターンの生活になりやすい時期にもみられます。やはり重症化しやすいのが特徴です。

急性膵炎とはどのような病気か?

 膵臓は胃の背中側にある 長さ15センチぐらいの横に長い臓器ですが、食事のたびに大量の膵液を分泌し、その量は一日1.2リットルにも達します。膵液内には様々の消化酵素が含まれており、これが食物を消化して小腸から吸収される形まで炭水化物や蛋白質、脂肪などを分解してくれます。
  膵臓の中には大量の消化酵素が蓄えられており、それが食べた後の消化管ホルモンの刺激で十二指腸に分泌される訳ですが、その消化酵素自体が膵臓自体を消化してしまわないのは様々な機構があるからです。ところが大量にアルコールを飲み続けたりすると膵液を通す通路の膵管のうち微小な膵管が詰まり気味となり消化酵素を含む膵液が管外に漏れ出しやすくなります。アルコール自体にも消化酵素をもっている細胞を障害する作用があると考えられています。
  管外に漏れ出た消化酵素は活性化されますが、ひとたび活性化されると蛋白分解作用のある酵素の作用で漏れ出た酵素が次々に活性化されて膵臓が自己の消化酵素で自己を消化するという事態を引き起こします。それが自己消化で漏れて増えた消化酵素をさらに多量に活性化してどんどん膵臓の自己消化がすすむという恐ろしい悪循環が発生します。
  これが急性膵炎の病態で強い腹痛をともないます。重症化すると膵臓全体が溶けてしまい、ショック状態などの極めて危険な病態を招き死亡率も高い状態に至ります。腹痛で始まる病気のうち最も恐ろしいのが急性膵炎といってもいいでしょう。

急性膵炎を避けるには?

 重症や中等症の急性膵炎 の原因としては圧倒的にアルコールが多く、アルコールを過剰に毎日摂取することを避けねばならないことは明白です。脂肪や蛋白質の多いいわゆるご馳走を食べてお酒を大量に飲んだときに重症化しやすいといわれていますのでお正月や連休というのは急性膵炎については危険な時期と考えられます。こういう時期は普段と違うライフスタイルになってしまうことが多いので、普段からお酒を多く飲むひとはこういう病気もあるという事を念頭において酒量を節制する工夫をしてみるとよいでしょう。
  アルコールを普段から多めに飲んでいる場合にはもともと膵臓が微小膵管の部分で傷んでいる事が多く、このため容易に膵液の逆流と漏れ出しやその活性化が起こりやすいことも知っておくことが大事でしょう