ME&YOU診察室のコーナー12月号より

歯磨きについて 

1日1回は歯垢を完全に落としきる磨き方を目指そう

特別医療法人福島厚生会
福島第一病院 歯科副部長 阿部 守明

 

バイオフィルムって何!?

口の中にはたくさんの細菌が棲みついていることはご存知でしょうか。中でもウ蝕(ムシ歯)や歯周病の原因とされる歯垢(プラーク)は、1ミリグラム中に1億個の細菌がいるといわれています。これは糞便1ミリグラム中の細菌より多く、俗に「歯糞」といわれることは、的をえた表現ではないでしょうか。 ところで川底の石の表面、下水管、流しの配水管内面のぬめりやネバネバ、そして歯の表面 に形成される歯垢(プラーク)などは、近年"バイオフィルム"とよばれています。 薬剤(抗菌物質、抗生剤)が効きにくいという特徴があり、また感染を引き起こすことも知られています。このためウ蝕や歯周病の予防には、歯垢を機械的に除去するブラッシングが欠かせないのです。

歯垢の見つけ方

楊枝で歯の表面をこすってみると、白いフワフワした垢のようなものが付いてくると思います。これが歯垢です。専用の染め出し液を使うと歯垢は色素を取り込んで濃いピンク色に染め出されるのでさらに明確に確認できます。

歯垢が残りやすい部位について


歯垢は歯ブラシを歯に当てにくい箇所、毛先が届きにくい箇所に残ります。歯の噛む面 の溝や窪み、歯と歯肉の境目、および隣接する歯の間等です。歯並びの悪い歯や不適冠・不適充填物の入った歯、部分入れ歯のバネがかかる歯の根元は、さらに歯垢が蓄積しやすい状態となります。

1日3回簡単に磨くよりも・・・


歯垢を完全に落とした歯の表面に、肉眼的に再び歯垢が形成されるのを確認できるまでには24時間かかるとされています。すなわち歯の表面 をシールするのに十分な量の歯垢が形成されなければ、ウ蝕・歯周病の発症条件は満たされません。このことから、1日3回簡単に磨いて歯垢が蓄積されるよりも、1日1回は1本1本の歯の表面 の歯垢を完全に落としきるまできちんと磨くほうがウ蝕、歯周病予防には大変効果 的といえます。

歯垢除去の方法

歯磨きの方法は、ローリング法からスクラッビング法、バス改良法など時代とともに変わっています。また、歯ブラシの種類も多く、電動歯ブラシや最近では音波歯ブラシ、超音波歯ブラシまで登場し、清掃効率の高いことから利用者が増加しているようにも思います。しかし基本的には、歯面 に付着した歯垢と歯ブラシの毛先が確実に触れることを意識して磨くことの方がより重要で、特定の磨き方にこだわる必要はありません。 一方、電動歯ブラシや音波歯ブラシを使用している場合は、その効果をあまり過信しすぎず、磨き残しがないことを確認する習慣をつけることが大切です。

歯垢を取る道具や歯磨きの注意点について


歯ブラシのヘッドの大きさは20ミリ×10ミリを超えない小さめのものが使いやすいと思います。ウ蝕予防のため歯冠部のエナメル質を磨く場合は、普通 の硬さや、やや硬めでも良いでしょう。その際、強い力を加えて磨きすぎると、歯肉を傷つけたり、歯肉の退縮を引き起こし、歯根露出、歯根表面 の楔状欠損を生じたり、知覚過敏を起こしたりしますので注意が必要です。  歯と歯肉の境目を磨く歯周病予防のための歯ブラシは、歯肉を傷つけないようなやわらかいものを選ぶ必要があります。硬くないと磨いた気がしないという人がいますが、歯垢の除去効率は歯ブラシの硬軟には関係ありません。毛先がピンと張って"こし"があるとよく磨けますので、毛先が外側に開き始めたらすぐに換える必要があります。さらに歯間の補助清掃用具である歯間ブラシや、デンタルフロス(糸)などを使うとより効果 的です。 歯垢が石灰化し歯石となってしまった場合は、歯科医院でプロフェッショナルトゥースクリーニング(専門的な歯の清掃)を受ける必要があります。多くの場合、同時に歯肉の検査が実施されますので、歯の周囲組織の健康状態が明確になります。

まとめ  

お口の中の環境や、全身状態、生活習慣が各人とも異なる中で、自分に合った適切なブラッシングを見出し、毎日続けけられるように努力することこそがウ蝕や歯周病の最大の予防策です。さらに、コミュニケーションのとれる"かかりつけ歯科医院"のスタッフが、個々人にあったサポートをしてくれることでしょう。