ME&YOU診察室のコーナー11月号より

ウ蝕(ムシ歯) 

低年齢者は減少傾向。以前ほど削らない治療も登場

特別医療法人福島厚生会
福島第一病院 歯科副部長 阿部 守明

 

ウ蝕(ムシ歯)は、低年齢者で減少傾向 特別医療法人福島厚生会 福島第一病院 歯科副部長 阿部 守明 ウ蝕(ムシ歯)が人類に登場したのは、20万年前といわれています。ウ蝕への対処は、最初は放置するだけであり、次にはあまりの痛さに耐えかねて抜歯することでした。150〜200年ほど前から修復処置が行われるようにはなりましたが、現在でも、しばしば不快な痛みで人々を苦しめ、歯周病とともに歯を失う大きな原因となっています。「健康」への関心が高まる昨今、メディアを通 じてウ蝕や歯周病に対する一般の方々の理解も深まり、8020運動も良く知られるところです。しかしながら現実は、痛まなければ受診しないという方が、かなり多いのではないでしょうか。 5年ごとに行われる歯科疾患実態調査で、ムシ歯のある人の割合(ウ蝕有病者率)は乳歯(1〜15歳未満)総数で45.2%(平成11年)で、前回の56.9%(平成6年)より約12%低下し、低年齢者で減少傾向が見られます。しかし永久歯(5歳以上)の総数では85.7%(平成11年)、85.9%(平成6年)と以前高い割合をしめしています。

ウ蝕は感染症


無菌動物にウ蝕誘発蝕を与えても、ウ蝕が生じないことから感染症であることが証明され、またストレプトコッカスミュウタンスとラクトバチルスが代表的なウ蝕原因菌とされています。

ウ蝕とは?
 

ストレプトコッカスミュウタンスが、糖質を分解して酸を作ると同時に粘着性物質(不溶性グルカン)をつくり、歯の表面 に付着します。この粘着性物質は水に溶けにくく、うがいだけでは取れないので他の細菌が集合するのに役立ち、歯垢形成を助長します。こうして形成された歯垢内の細菌によって生じる酸により、歯の無機質(カルシウム塩)が脱灰され、また酵素によって有機質が分解されるために歯が崩壊します。このような病変が、ウ蝕です。

ウ蝕の発生  

ウ蝕の発生には、原因菌の存在が必要であることはいうまでもありませんが、他にも歯と唾液、食物、時間の因子が深く関与します。すなわち歯垢沈着しやすい歯の形や歯並びをしているかどうか。唾液の量 や口腔内が酸性に傾くのを元に戻す唾液緩衝能の程度、糖質の摂取回数や時間を含む飲食物の種類や摂取方法を含めた生活習慣、全身疾患などが影響します。

ウ蝕の進行

歯は中心部の歯髄を保護するように周りを象牙質、エナメル質が取り囲んでいます。ウ蝕は外表のエナメル質から歯髄側に向かって次第に進行します。初期には無症状ですが、象牙質に達するとしみはじめ、さらに歯髄炎や根尖性歯周炎へと進行します。感染による膿が、閉鎖的な空間である歯髄腔や歯根膜腔、歯槽骨内にたまり続けると、組織内圧の上昇や、発痛物質により激痛を伴います。これは歯冠の崩壊の少ない歯に見られ、痛み止めや、麻酔も効きにくいのが特徴です。一方歯冠崩壊が大きく口腔への膿の出口が確保されている場合は、ほとんど痛みを自覚することなく、慢性経過をたどって歯髄が死に、骨の中に根尖病巣が形成されます。痛みがないからといって根尖病巣を長期にわたり放置しておくと、これが原病巣となって、慢性の心内膜炎や糸球体腎炎(歯性病巣感染)を起こしてくることがあります。

ウ蝕歯治療の流れ

かつて、ウ蝕歯の自然治癒はないといわれていました。従って、ムシ歯の治療は削って詰めるか、冠をかぶせることが中心でした。現在でも、多くの場合そうした治療は必要があって選択されています。しかし近年、肉眼的に実質欠損のないウ蝕エナメル質には、唾液由来のミネラルが再沈着する再石灰化という現象が起こることが明らかとなり、臨床的に、エナメル質の初期ウ蝕が治癒することが示されました。今後、再石灰化療法という削らない治療、予防処置への関心がさらに高まるもの思われます。もうひとつ接着性レジンという歯に接着する充填材料の登場で、以前ほど歯質を削らないで治療できるようになってきたことも大きな変化です。

まとめ  

最後に治療については、口腔環境が個々の患者様で異なるように、ケースバイケースで変わるものですから、かかりつけ歯科医の先生によく相談してみてもらうのが良いでしょう。