ME&YOU診察室のコーナー7月号より

急性冠症候群と突然死 

〜突然の胸痛・・・急激に悪化。自己管理と適切な治療が大切〜

特別医療法人福島厚生会  福島第一病院
福島第一病院心臓血管病センター 佐藤 晃一

心臓と冠動脈について

 急性冠症候群について説明する前に、心臓と冠動脈の関係について説明します。心臓は全身に血液を送り出す筋肉の塊でポンプの役割をはたしています。心臓が全身に送り出す血液はその中にたくさんの酸素を含み全身の組織がその酸素を受け取り生命活動が営まれているのです。心臓が休むと全身に酸素が行き渡らなくなり細胞が死んでいきます。またその一方で、絶え間なく動き続ける心臓自体も心筋とよばれる筋肉組織の集合で酸素を必要としています。この心筋に酸素を運ぶ血管が冠動脈(冠状動脈)なのです。この冠動脈は大動脈(全身に血液を運ぶはじまり)の根元から心臓の右半分、左半分を冠(かんむり)のようにとりかこむ2〜3ミリの血管です。

急性冠症候群とは

 急性冠症候群は冠動脈の動脈硬化が原因で心筋が急激に重篤な虚血(酸素不足)に陥った状態をさします。具体的には急性心筋梗塞と不安定狭心症がそれです。急性心筋梗塞は心筋への栄養血管である冠動脈が閉塞しその血管が養っている心筋が壊死しかけた状態です。 一方、狭心症は冠動脈が動脈硬化で狭窄(狭くなる)することによる心筋の虚血状態をさします。不安定狭心症とは限りなく心筋梗塞に近い急激に進行する非常に不安定な状態です。これに対し労作性狭心症は動脈硬化が徐々に進行するため急激に進行しにくく安定狭心症などといわれることもあります。

冠動脈が閉塞するメカニズムは

 加齢などにより冠動脈に動脈硬化が進展し、プラーク(コレステロール、細胞などが血管内に固まりとして育ち血管を狭くする)ができていきます。このプラークの一部が突然破裂し、プラーク内の物質が血液と接触すると血液が固まり、血栓をつくります。大量の血栓により血液の通り道がふさがれてしまうと急性心筋梗塞になってしまします。しかし、プラーク破裂がおこり血栓がつくられたとしても冠動脈が閉塞するまでには至らず、心筋が壊死までは起こさない場合は不安定狭心症となります。不安定狭心症は放置すると急性心筋梗塞になる可能性が大です。

心臓突然死って?

  心臓突然死の原因の大多数は急性冠症候群が考えられています。死亡した急性心筋梗塞患者の原因となった冠動脈病変を調べてみた結果、70%の患者の冠動脈狭窄が軽度で通常は激しい運動をしても全く症状がでない程度という驚くべき結果がでています。少量のプラークで軽度の冠動脈狭窄がおきていて通常は全く無症状であり何らかの誘引でプラークが破裂し一気に冠動脈内に血栓ができ冠動脈が閉塞し心筋梗塞に陥ります。急激に心筋の虚血が進行するため致命的となるのです。

症状がないのにどんなひとに起こりやすいの?

 このプラーク破裂は通常はほとんど症状もない人におこる可能性が高いのですが、いったいどのような人におこるのでしょうか?冠動脈にこういった病変が起こりやすい疾患や体質があります。これを医学的に冠危険因子と呼んでいます、高脂血症、糖尿病、高血圧症、肥満、喫煙などがこれにあたります。この危険因子をもつ方は冠動脈内に非常に破裂しやすいプラークを形成しやすいといわれています。

では急性冠症候群にならないようにするにはどうしたらいいの?

 最近の研究では、冠危険因子をもっている人は、若年者でも冠動脈にプラークが見られており、冠危険因子の修正が早急に必要といわれています。つまりコレステロールの摂取を制限、血糖のコントロール(食べすぎに注意)、血圧コントロール(塩分制限)、ダイエット、禁煙などです。

まとめ

 急性冠症候群は普段ほとんど症状がなく突然激しい胸痛ではじまりその症状が急激に増悪します。致死率も高く(心臓突然死)その予防が非常に大切です。しかしその予防は前述した冠危険因子を修正することです。一つ一つは全て自己管理ができるものばかりです。皆さんも自己管理と専門医での適切な診断治療を受けられてはいかがでしょうか。