ME&YOU診察室のコーナー9月号より

歯周病

あなたは大丈夫ですか? 怖い!40代で80%の人が罹患(りかん)

特別医療法人福島厚生会福島第一病院 歯科副部長 阿部守明

歯周病ってなんだろう?

 四十代で既に八〇%の方が歯周病といわれています。歯周病は、歯垢(プラーク)の中に存在する歯周病原菌(ジンジバリス菌など)により、歯を支える歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)が破壊される病変です。炎症の起こっている部位が歯肉であれば、歯肉炎、さらに深部組織へ炎症が波及すれば歯周炎と呼びます。ジンジバリス菌の存在は、歯周病が成立するための必要条件ですが、ほかにも歯周病を悪化させるいくつかのリスク因子があります。

歯周病の症状は?

 歯肉炎(歯周病のごく初期)では、歯肉が赤く腫(は)れ、歯ブラシ時に出血し易くなります。この時期、出血するからといって歯ブラシを当てないのは逆効果です。
 歯周炎に移行すると急性と慢性を繰り返して歯周組織の線維や骨を破壊していきます。慢性期では、歯と歯の間や歯周ポケットの隙間に食渣(食べかす)がはさまりやすくなり、歯は次第に動くようになります。さらに、歯肉から膿(うみ)や血がにじみ出るので独特の強烈な臭いが生じ、本人は知らずの内に"歩く口害(?!)"となるのです。また、虫歯もないのに歯が全体的にしみることもあります。
  一方、急性期には激烈な痛みを伴う場合もありますが、多くの場合歯肉が"プクッ"と腫れたり、噛むと痛んだり、患部の感覚が鈍くなったり(歯が浮いたような感じ)します。
  この急性期の症状を何回か経験していれば、歯周病は確実に悪化しているのです。

歯周病を悪化させるリスク因子とは?

 現在、リスク因子として知られている要因は、遺伝、糖尿病、喫煙、食習慣、口腔(こうくう)清掃、ストレス、性ホルモンの不調和、悪習癖、薬の長期服用などです。そのほとんどが、生活習慣にまつわる因子ばかりです。たとえば、喫煙は、歯肉の血行不良をひき起こすことはよく知られています。血行不良は、見かけの炎症は軽くても、一方で歯周病菌に対する抵抗力を低下させることでもあり、外科的な治療後の傷口の治りを遅らせてしまいます。
 糖分の摂取過多や咀嚼(そしゃく)不足(唾液の流出が少ない)は、ジンジバリス菌の増殖の場となる歯垢を歯面に付着しやすくし、歯垢の形成を促進します。また、不規則な食事、栄養の偏りは歯肉を含む粘膜全体を脆弱(ぜいじゃく)にします。
  そして、歯ブラシ等で歯垢を確実におとせるかどうかが、ジンジバリス菌の数を減らせるかどうかということに直接関わります。

歯周病菌(ジンジバリス菌)が、心臓の血管を壊し潜りこんでいる?

 サイエンスという世界的な専門雑誌に掲載された論文の内容です。 まず、動脈硬化をおこし厚くなった血管壁から約4割の確率でジンジバリス菌がみつけられました。さらに、実験的にですが、心臓の冠動脈を壊すことや菌のだす毒素の働きに血液を固まりやすくする働きのあることがわかりました。心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞等の血管病を起こし易くする危険性があるということです。

歯周病は治る病気なの?

 歯肉炎は、治療と適切な歯磨きを含む口腔ケアを学び、実践継続すれば治ります。 しかし歯周炎では重症になるほど治療が難しくなります。歯が著しく上下方向にふわふわと動くようでは、歯自体に問題がなくても噛む機能は失われ抜歯するしかありません。 早期発見と早期治療が大切です。  

どのような検査や、治療をするの?

  歯周病の進行の程度を調べるために、主にレントゲン検査、歯周組織の破壊の目安となる歯と歯肉間の溝の深さ(歯周ポケット)を測る検査を行います。 失われた歯槽骨の回復の難しさゆえ、現状の保険診療では、歯周病の進行の阻止と病状安定を治療の目標とします。実際の治療では、まず歯垢、歯石除去、歯磨き指導を行います。再検査、再評価の後、必要な場合には、歯周ポケットを浅くするための簡単な外科処置を行います。病状安定の場合でも?完全な治癒?はないので、継続的な経過観察と加療が必要です。 治療を成功させるには、患者様自身の治療意欲と自宅での口腔ケアの継続、歯科スタッフとの信頼関係がなにより重要です。大切な歯を失わないためにも定期検診を受けましょう。