福島民友新聞「ME&YOU」7月号診察室のコーナーより

 

骨粗しょう症

寝たきりにならないために

進む「骨折を起こさない治療」

 

特別医療法人福島厚生会
福島第一病院 副院長 
整形外科部長 千葉 勝実

 

 

 当院整形外科に1年間に入院する方、約300人の1/3が骨粗鬆症に関連した疾患です。脊椎圧迫骨折(背骨の骨折)、前腕骨骨折(手首の骨折)、上腕骨頚部骨折(肩の骨折)、肋骨骨折(胸の骨折)、鎖骨骨折、骨盤骨折等です。しかも1度骨折をすると数回骨折を繰り返す事が多く、終には寝たきりになられる方が居られます。大腿骨頚部を骨折した方は1年以内に11%〜20%が死亡するというデータがあります。また50歳の女性が、その後大腿骨頚部骨折で死亡するリスクと、乳癌で死亡するリスクは同程度と言われています。さらに高齢になると脳卒中で死亡する率と同程度と言われています。

高齢者だけの病気ではない

骨粗鬆症は一般に高齢者の病気と思われがちですが実は若いうちに始まっています。骨折を起こしてから気付かれては多少遅い感じがします。男性の場合、喫煙、飲酒、胃切除、性腺機能低下、薬剤により生ずる二次性骨粗鬆症が多いですが、女性は閉経後に女性ホルモンが急激に低下して生じる一次性骨粗鬆症が多いようです。さらに女性の喫煙・飲酒率が上昇し、また糖尿病の増加、運動不足、過度のダイエットなどにより骨粗鬆症予備軍は着実に増加しています。

筋力も低下している

 私たちの調査では、結果なのか併発症かは不明ですが骨粗鬆症患者は骨の脆弱さのみでなく筋力も低下していることが分かりました。筋の瞬発力、持続力が低下しています。筋力低下は転倒の危険性を増します。骨粗鬆症は骨だけが弱くなっている病気で無いようです。

尿で骨粗鬆症が分かる

検査の進歩 骨塩量測定:骨の硬さを測定する検査です。腰の骨、手の骨、足の骨にて測定します。測定部位に因る差は少ないとされますが、多少差が有るようです。手の骨で骨塩量低下少ないからといって腰の骨に骨塩量低下が無いとは言えません。また、生活歴や病歴とも関連があり、1箇所だけの測定結果が良かったからといって安心は出来ません。 骨代謝マーカー:尿を検査することで骨吸収の亢進状況を知ることが出来る検査が保険で認められました。骨塩量が正常でも骨代謝マーカーが高値なら早晩骨粗鬆症になる可能性が高く早期治療の対象となる場合があります。また現在の治療が上手くいっているか効果判定にも利用されます。骨塩量測定に比較し早く治療薬剤の効果が判定できるのが特徴です。

骨粗鬆症検査は何時するのが良いか

女性の場合;前に述べたように女性の喫煙・飲酒率が上昇し、運動不足、過度のダイエット、偏食等により若い女性の骨粗鬆症予備軍が増加しています。そこに出産を経験しますとそれを契機に骨粗鬆症に伸展することがあります。また多くの方は閉経後急に骨塩量が低下します。また、60歳を過ぎると加齢による骨粗鬆症の危険が加わります。したがって出産後、更年期、60歳頃に症状の有無に係わらず検査されると良いでしょう。65歳を過ぎたら一般検診の時に一緒に骨粗鬆症の検査も受けましょう。症状(腰痛)のある場合はもちろん検査が必要です。 男性の場合;大病(大きな手術、炎症性疾患、強い薬剤を使用)した後は検査を受けられると良いでしょう。愛煙家は還暦前に1度は検査されると良いでしょう。

痛みをとるから痛みを起こさないへ

最近の骨粗鬆症治療の考え方は骨折が治る、から骨折を起こさない、という方向に進んでいます。言い換えれば、早期発見早期治療ということになります。骨粗鬆症の治療を行っているにもかかわらず、大腿骨骨折はこの10年間に2倍に増えています。骨折を予防する薬剤が無かったためです。

骨折を減らす薬

現在、骨塩量を確実に増加させる薬剤は女性ホルモン剤とビスフォスフォネートが代表的です。女性ホルモン剤は主に一次性骨粗鬆症に使用されますが年齢が高くとも効果が認められます。副作用は血栓性静脈炎、肺塞栓、性器出血、乳癌、子宮癌などで使用に注意が必要ですが、女性の生活の質を向上させます。 ビスフォスフォネート製剤は今後主流となる薬剤です。朝昼食間に2週間内服して3ヶ月休薬する薬剤、と毎日朝食前に水180ccで飲ム薬剤があります。飲み方に多少注意が必要ですが効果は期待できます。

財布もむしばむ

 医療保険制度、介護保険制度の変化により寝たきりになると経済的にも負担が大きくなります。いつまでも丈夫な骨で財布に優しい生活をしましょう。


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