ME&YOU 5月号 診察室のコーナーより

急な腹痛(急性腹症)

すぐに処置をしなければ命にかかわることも・・・・

 

 急に激しい腹痛を主訴として多くの患者さんが来院されますが、その中でも緊急を要する病気について、お話しいたします。

 

特定医療法人福島厚生会
福島第一病院副院長・外科部長
厚生会クリニック所長 阿久沢 和夫

 

急性腹症とは?

突然激しい腹部の痛みを起こす病気の総称です。すぐに処置しなければ命に関わる事があります。救急の場合、時間的な制約や十分な検査が出来ない中で、素早く治療方針を決めなければなりません。第一に考える点は、緊急に手術が必要かどうか判断する事です。  その原因となる病気には、胃や腸が破れて起こる急性腹膜炎・腸閉塞症・胆石症の発作(胆嚢炎をともなうこともあります)・急性膵炎など外科にかかわる病気や、子宮外妊娠・卵管炎・卵巣嚢腫の茎捻転などの婦人科の病気のほか、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの内科的な病気や、尿管結石症などの泌尿器科の病気や、小児科的な病気や、腹部動脈瘤の破裂など多くの場合が考えられます。

 

 

重要なポイント

腹部の病気の場合以前に病気に罹ったことがあるか、手術を受けているかどうかも重要なポイントです。例えば以前に胃潰瘍や十二指腸潰瘍と診断されている人が突然痛みを訴えてきた場合は潰瘍の穿孔を考えなければなりません。ほかに以前手術を受けている人では癒着により腸が捻じれたり、索状物(紐のようなもの)で腸が締め付けられたりします。このような時は痛みが激しく突然起こります。診察すると腹部全体が板状に硬く触れたり、腹部のレントゲン写真にて特有の所見がみうけられます。ただお年寄りの方などは、症状の起こり方やいつどんな診断を受けているかはっきりしないことも多く、身内の方のお話が大変参考になります。そのときの様子がわかる方が付き添っていらっしゃると大変助かります。幼少時に受けた手術などは自分では正確な病名を知らないことが多く、子供のときに手術をした場合本人にできるだけ正確に内容を話しておく事も大事かと思われます。

 

 

自分の判断で薬の服用は避けよう

 現在の症状が、いつ・どのようにして起きてきたのかという事も大事なポイントです。痛みが段々強くなってきたのか、あるとき突然起こったのか、熱があるのかどうか、吐き気や嘔吐があるか、どこが痛むのか、食事の状況や便通の具合(便秘か下痢か)などがこれにあたります。いずれにしても急に起こった激しい腹痛の場合には、ご自分の判断で鎮痛剤や解熱剤などを服用するのは避けたほうがよいでしょう。薬を服用することで痛みや熱などの症状が軽くなり、大事な症状が隠されて、診断が遅れてしますことがあります。激しい腹痛を伴う病気の場合診断や治療の遅れが命にかかわる場合もありますので、このような場合はすぐにでも病院・医院を受診したほうがよいでしょう。

 

 

難しい小児の場合

 大人の場合は本人の訴えがはっきりしていることが多いので、比較的わかりやすいのですが、小児の場合は本人からの訴えがなかったり、コミュニケーションが取りにくいことも多く診断が困難な場合があります。  小児期の腹痛を引き起こす病気は比較的限られており、大人のように多くの病気を鑑別しなくても済みます。正確な診断には周囲の成人の方のお話が重要です。いつから具合が悪そうか、 嘔気・嘔吐の有無、便の状態などです。  救急に治療が必要な病気には、乳幼児期には腸重積・ヘルニア嵌頓があり、学童期には急性虫垂炎・外傷などがあります。  腸重積という病気は腸管のなかに腸の一部が入りこんでしまう状態で、生後半年から1歳のころに多く見られます。急に不機嫌になり、嘔吐・血便などが見られます。多くの場合手術せずに治すことができます。  ヘルニアの嵌頓は腹壁の弱いところから腸の一部分が飛び出して戻らなくなり、腸が締め付けられている状態です。戻らないときには緊急手術が必要となります。右下腹部痛があれば急性虫垂炎を疑う必要があります。 自転車などで転倒しハンドルで腹部を打撲したりして内臓を損傷することもあります。

 

注意深い観察が大事

 小児の場合本人の訴えが少ない場合が多いので周囲の人の注意深い観察が大事です。急に不機嫌になり泣いたり、ぐったりし顔色が悪い、体を曲げて痛がったり、繰り返し痛がる、嘔吐や下痢が見られるなどの症状があれば早めに診察を受けるようにしてください。