福島民友新聞社 ME&YOU 平成14年1月号より

 

長距離大量輸送時代の新しい健康トラブル

〜6つの予防法を頭に入れましょう〜

 

  明らかになったエコノミーク ラス・シンドロームの実態

 我が国で初めてエコノミークラス・シンドロームの実態が国土交通省所管の航空医学研究センターから発表されました。この実態調査は国際線が乗り入れている21空港の周辺にある110の病院からの報告をまとめたものです。この報告は21世紀の長距離大量輸送時代の新奇な問題として注目されました。

   エコノミークラス・シンドロームはどのくらい起っているのか?

 実態調査によれば、平成5年〜12年の8年間でエコノミークラス・シンドロームと診断された肺塞栓症(肺血栓塞栓症は同じ病気)は44人で、うち女性は91%、40人を占め男性より圧倒的に多く発症しています。平均年齢は61歳です。死亡された人は4人で、発症すると1割弱が死亡したことになります。死亡に至る直接死因は血栓(血液のかたまり)が肺の血管につまってしまい、呼吸ができなくなる肺塞栓症ですが、その誘因となる足の深部血栓性静脈炎(静脈に炎症を起し血栓が生ずる病気)はその数倍から十数倍も発症していると推測されます。

 

特定医療法人福島厚生会 理事長 

星野俊一

 

どのくらい長く航空機に乗っていると危いか?

 エコノミークラス・シンドロームを発症した人達の平均搭乗時間は11.6時間と長時間です。 エコノミークラス・シンドロームはエコノミークラスの乗客にだけ発生するのではなく、比較的座席がゆったりしたビジネスクラスやファーストクラスの乗客にも同様に発症します。5時間以上の飛行時間を要するハワイやシンガポールより遠い旅行では用心しなければなりません。

航空機のどこの座席が安全か?

 航空機に乗って海外旅行するときには、離陸するときの風景や目的地に向ってぐんぐん高度を下げてきれいな海や陸地に近づく風景を窓から見るのは、気持がわくわくするものです。しかしよく見える窓側席の人は通路側席の人につい遠慮して席にじーとしてがまんしている人が多くみられます。エコノミークラス・シンドロームを発症した人が座席を離れた回数は平均約0.5回と少く、半数近くの人は飛行中に席を立たなかったことがわかりました。

エコノミークラス・シンドロームを発症しやすいタイプは?

 エコノミークラス・シンドロームにかかり易い人は60歳以上、女性です。足が腫れたり、むくんだり、足に静脈瘤(皮下に太くなった静脈が浮いてみえる)のある人は要注意です。より安全な旅行をするためには専門医に予防策を相談することをお勧めします。  

エコノミークラス・シンドロームは他の乗り物でも起るの?

 これは決して航空機の旅行だけではありません。ヨーロッパのデータによると自動車、バス、列車旅行などでも、座席に5時間以上座っている場合に発症する確率が高いとされています。

予防法は?

 エコノミークラス・シンドロームの予防の6つの原則は、

1.座ったままで、つま先立をしたり、つま先を引き上げる運動をする。

2.ふくらはぎを軽くもむ。

3.弾力性ストッキング(足首のサイズでSMLをきめる。中圧医療用)は効果的。欧米では予防法の主流。

4.時々手足を伸ばしたり、歩く。

5.時々深呼吸をする。

6.適度な水分補給とアルコールはほどほどに。

更にひどい静脈瘤や静脈炎にかかっている人では、

7.弾力性ストッキング+抗凝固剤(血液をかたまりにくくする薬剤)を追加。  

ワンポイントアドバイス  

エコノミークラス・シンドロームは長距離大量輸送時代の新しい健康トラブルです。楽しい海外旅行やドライブを快適に過すために一寸気をつかいましょう。


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