福島民友新聞 ME&YOU12月号 診察室より

 

 

喫煙の害

−早い禁煙で健康な生活を取り戻そう−

 

 

福島第一病院 消化器科部長  柳沼信久

タバコが引き起こす原因
 喫煙がおこす病気は肺癌が有名ですが、喉頭癌、食道癌、膵臓癌など多くの癌の発生と密接に関係しています。さらに肺気腫のように酸素を肺から取込めなくなる呼吸不全の原因でもあり、心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化疾患の進行を促進する事も明らかになっています。
タバコ病の実態

 タバコを喫わない人の発生率を1とした場合に喫煙者は何倍の疾患を発症するかというのが相反危険度です。肺癌では1日20本以上喫うと約5倍になり、20本未満喫煙開始者では20倍にもなります。肺癌は5年生存率が10%ぐらいですから罹患したらまず死亡する恐い病気で、事実癌死原因の1位になりました。肺気腫などの呼吸不全では相対危険度は約2.5倍です。在宅酸素療法が必要になったときの余命はわずか3年です。狭心症、心筋梗塞などの心疾患では相対危険度は約3倍、脳梗塞など脳血管疾患では約3倍の危険性があります。妊娠した母親が喫煙していると異常妊娠が多く、新生児の周産期死亡や、乳児突然死症候群が多い事も知られており、次世代の最初期に対して危害を加える事になります。喫煙は胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治癒を遅らせ、潰瘍再発を多発させる事実もあります。禁煙するとこれらの危険度は急速に下がり10年で非喫煙者とほぼ同じになります。

 間接喫煙とは喫煙者がいるときにそのタバコの煙で汚染された空気を周囲の人が吸う事を指しますが、これも重大な結果をもたらします。配偶者が間接喫煙で肺癌になる危険度は約2倍です。職場や家庭で間接喫煙をさせられている非喫煙者の被害を考えると公共の場等での禁煙が米国で実行されているのは当然でしょう。

タバコをやめられない理由
理由  多量の発癌物質を含む以外に分かっていることは、タバコは嗜好品でなく、依存性をもった薬物だという事です。依存性とはその薬物が体内で少なくなるとイライラする、もう一度ほしくなるという症状が出る事を意味します。やめられないのは当然ともいえます。ニコチン依存症以外にもタバコ内の別の物質が依存性をもたらすという研究もあり、タバコの依存性は根が深いようです。多くの喫煙者が禁煙したいと思ってもなかなか成功しない1つの理由です。他の理由はタバコの害が出てくるのが20年遅れるという事実にあります。つまりタバコを吸っていてもすぐには目に見える形で障害が出て来ないので禁煙できない訳です。実際は、病気が喫煙のせいだったと気付いた時は手遅れな訳です。先進国の中で喫煙率の最も高いのは日本ですが、平成5年頃より中学、高校で喫煙の害について教えるようになりました。
日本におけるタバコ経済学
 タバコを吸う人は仕事の能率が15%落ちるという調査結果もありますが、日本全体で総計どのような結果をもたらしているかをみてみましょう。経済的利益としてはたばこ税が1兆9千億円、その他の雇用で8千5百億円、計2兆7千億円です。喫煙で増えたコストは医療費3兆2千億円、休業損失、休業保障、火事の消防費、損失国民所得などで2兆4千億円、計5兆6千億円です。差し引き2兆8千5百億円の赤字です。赤字を0にするためには1箱660円にする必要があると云われています。
禁煙の方法
 公認された依存性の薬物をやめるのはなかなか困難です。ニコチンガムなども効果がありますが、抗鬱剤の一部も効果が確認されています。一番はやめるという強い意志のようです。政府がタバコ供給量を減らす手も考えられてよいでしょう。

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