福島民友新聞 ME&YOU11月号 診察室より

 

 

―良い住宅は健康な長寿を実現する― 

 

福島第一病院 消化器科部長 

柳沼 信久

住宅とは

家は何のために建てるかという事を真剣に考えた事のある人はあまり居ないでしょう。しかしこの一見馬鹿馬鹿しい問いの中に理想の家のヒントが隠れています。今回は病気の話というよりもどういう住宅が健康を守れるかという話や、問題のある住宅はどんなものかという考察をしてみたいと思います。  きびしい環境から人間を守るのが住宅の役目である事は明らかです。すなわち雨風、暑さ寒さ、湿度、騒音、悪臭、汚染空気、などが直接人体に影響しないようにする事です。晴れたさわやかな気候ではほとんど住宅は不要ですが、それ以外の時にはなくてはならないものです。

 

高断熱高気密住宅のもたらした健康被害

住宅の冷暖房費を節約するには暖気や冷気を失わないようにすることが肝心で、そのために断熱材をいれて高断熱化をはかるのですが、すきまがあるとそこから冬は冷気が入って居室の下の方を冷やし居心地を悪くしますので、高気密化は高断熱とは切り離せません。しかし、この高断熱高気密化が日本の住宅にもたらした事はアトピー性皮膚炎の激増と、気管支喘息の増加でした。では一体何が悪かったのでしょうか?少し考えれば分かることですが魔法瓶の中に人間を入れるのと同じ事をしているのですから人体から出る水分と二酸化炭素を取り除く必要が出て来る事は明らかです。魔法瓶の中に住むことは不可能で、住めばすぐ窒息して死に至ります。高断熱高気密にとらわれたため温度上昇と湿度上昇を招きダニの増殖やカビの繁殖をきたしたというのが真相です。従って、湿気を排出し窒息しないために換気を常時行える方法を講ずる必要があります。ここでもう一度原点に帰ってみると換気したら暖気や冷気を失うのだから高断熱高気密の意味がなくなるのではないかと考えられます。そこの折り合いを付ける方法はないかと考えることになります。熱交換型計画換気というのがそれで、家の内部から捨てる空気の熱を外から取り入れる新鮮空気に与える機械があります。これが必須条件で、高断熱高気密プラス熱交換型計画換気という三位一体で理想的な室内空気条件が達成されることになります。

 

暖房とは  

家の中で石油ストーブを焚いている家庭が多いと思いますがこれは全くの自殺行為です。車に排気ガスをホースで引き込んで自殺する方法がありますがこれと全く同じ事を家で平気でしている人のなんと多い事かとあきれてしまいます。ファンヒーターも同じ事で低断熱低気密のザル住宅だった過去の日本の住宅ではそれでも結構でしたがこれを高断熱高気密住宅でやればたちまち酸欠で死亡事故を招きます。従って暖房は室内空気を汚さないクリーンヒーターにする必要があります。これを使うだけで冬の生活は楽になります。高断熱・高気密・熱交換型計画換気を達成してさらに室内空気循環路を適切に設定しますと全室同温度(±1℃)、湿度も55%までになり、カビ、ダニの繁殖は激減して常に春のような室内環境が生まれます。

 

温度差をなくす効果

ヒートショックという言葉をご存じでしょうか?これは家の中に冬場暖かい居室と冷たい風呂場のような温度差のある場合に急に寒い方に移ったときに生じる人体への悪影響を表す言葉です。脳卒中が寒い風呂場で多発することは有名ですが、前述の条件を満たす住宅ではこの事故が皆無となります。良い住宅を建てるだけで脳卒中が無くせる訳です。

 

その他の注意点

断熱材に結露して家が腐ったという話を聞いた事があると思いますがこれは断熱材の入れ方が間違っていたためで現在家の構造の外側に断熱材を貼る外断熱工法が主流になりつつあり、断熱材の内側に水蒸気を通さないビニールシート層をつければ家の構造体には全く結露しなくなります。今後こうした建築法が普及するとアトピー性皮膚炎や気管支喘息、ヒートショックによる脳卒中は激減するでしょう。低湿度でリウマチまで改善することになります。