ME&YOU 6月号診察室

 

強い症状が起きると危険

新しい手術で早期復帰が可能

 

執 筆

特定医療法人 福島厚生会
 福島第一病院 副院長・外科部長
 厚生会クリニック 所長
阿久沢 和夫

 

ヘルニアとは?

 お腹の中にある腸などの内臓(ヘルニア内容)が、薄い腹膜(ヘルニア嚢)に包まれたまま、腹壁などの弱い部分やわずかなすき間(ヘルニア門)から脱出したものを総称して言います。  

 症状は局所の膨隆が主です。急に下腹部や足の付け根などが腫れてきて気が付きます。起こる時期や部位、何が出てきているか、自然に戻るかどうかなどによりヘルニアかどうか診断されます。根本的な治療には手術が必要です。外から適度に押してやることで、脱出したものを戻すことができる還納性(かんのうせい)ヘルニアと、自然には戻らない非還納性ヘルニアがあります。なかでも血管が締め付けられる絞扼性(こうやくせい)ヘルニアでは緊急手術となります。このような病気としては、一)股のところが膨らむソ径ヘルニア、足の付け根が膨らむ大腿ヘルニア、二)以前受けた手術の跡が膨らむ腹壁瘢痕ヘルニア、三)おへそのところが膨らむ臍(さい)ヘルニアなどがあります。

 

ソ径ヘルニア

最も多く見られるのはソ径ヘルニアで、一般に脱腸と呼ばれています。腸管の一部がももの付け根や陰嚢に飛び出しているもので、男性に多く見られます。

発生の仕組み

小児に見られる先天性のもの・・胎児期にできたソ径部の鞘状(さやじょう)の突起が自然に閉じなかったため、腹圧により脱出して発生します。 成人に見られる後天性のもの・・加齢などで腹壁の抵抗が減弱している場合や、重い荷物の運搬などで腹腔内圧が亢進したりして発生します。

 

どんな症状が出るか?

局所の膨隆が主です。ソ径部とよばれる足の付け根に近いところが腫れてきます。普段は何ともなくても、立った時や泣いた時にみられます。出ているときは局所の不快感や鈍痛があります。横になって軽く押さえると自然に引っ込みます。

合併症・緊急のポイント

 狭い部分(ヘルニア門)から、強い腹圧などによって腸がたくさん押し出され、戻らない状態は、嵌頓(かんとん)ヘルニアといって大変危険です。痛みが強く、又吐いたり、ショックを起こしたりなどの強い症状がみられます。ヘルニア嚢内の腸がヘルニアの入り口(ヘルニア門)で締め付けられて、血液が腸へ充分に流れなくなったためです。このまま長い時間がたつと、腸が腐ったり破れたりして、腹膜炎になることがあります。ヘルニアのある児が、急に火がついたように泣いたり、吐いたりした時は、これを疑ってももの付け根をよく観察する必要があります。戻らないときはすぐに医師の診察や治療を受けてください。緊急手術が必要となることがあります。

治療方法は?

 ソ径ヘルニアは自然治癒が少なく、外科的な治療、すなわち手術が必要になります。 小児の場合、腹膜が鞘状になったヘルニア嚢を出きるだけ上方でしばり(高位結紮)、ヘルニア門を閉鎖します。  成人の場合は、腹壁の抵抗が減弱し筋肉や筋膜が弱っているため、ヘルニア嚢の切除に続いてヘルニア門の閉鎖や後壁補強を行う必要があります。以前は靭帯や筋肉を直接縫い合わせる方法がとられていましたが、最近はメッシュ状のプラグやシートを当て、ヘルニアの出てくる所を閉じ、同時に後壁の弱い所を補強する方法が広く行われる様になってきました。この新しい方法により手術部位のつっぱりが少なくなり、手術後の痛みが軽く、早期に日常生活に復帰できる様になりました。又再発も少なくなってきています。  手術にあたって、小児の場合は全身麻酔で行います。通常二十〜三十分で済み、当日は食事もとれ、入院も一〜三日程度で済みます。成人の場合、全身麻酔ではなく、局所麻酔や硬膜外麻酔で出来ます。この場合も当日食事がとれ歩行もでき、数日の入院で済みます。最近は日帰り手術も盛んに行われるようになりました。嵌頓ヘルニアの場合を除いては、都合の良い時期に手術する待機手術もあります。小児の場合には春・夏休み時に、又成人の場合には仕事の都合などで日時を決めることもできますので、ご相談ください。