ME&YOU 5月号診察室

 

肥満と運動不足が主因

適切なバランスに引き戻そう

 

執 筆

特定医療法人 福島厚生会

福島第一病院 消化器科部長 柳沼 信久

 

飽食の時代となって久しいですが、15年前に200万人といわれた糖尿病患者数は、平成9年には690万人、これに糖尿病の可能性が否定できない人を合わせると1370万人となって激増ぶりが顕著です。日本人の国民病といっても過言ではなくなりました。

 戦前、栄養の乏しい時代に結核が国民病であった(糖尿病は極めて少なかった)ころと反対の現象が起きているわけで、栄養過多などの生活習慣が糖尿病を激増させていると考えられます。

 本来、人間の体はバランスの上に成り立っており、そのバランスが過小にふれても過大にふれても問題を引き起こすということは、逆に考えれば栄養摂取などの面から適正なバランス点に引き戻せば、糖尿病が増え続ける状況を是正できると考えることができます。

 

糖尿病はなぜ怖いか?

糖尿病は血糖値が上昇する病気ですが、血糖が1デシリットル中200ミリグラムや300ミリグラムぐらいではほとんど症状もなく、検診を受けなければまったく分からず、何年も経ってしまったという患者さんがよくいます。しかし一定以上の高血糖のまま3年以上経過すれば必ず合併症が次々に起こってきます。

高血糖が持続するため、身体のタンパク室に糖が結合するなど、各種の代謝異常を起こし、タンパク質の変性などをもたらします。神経、網膜、腎臓に起こる合併症は特徴的です。網膜症による失明が失明の原因の第1位であることや、腎透析の新規導入者のうち、糖尿病性腎症が平成10年より原因疾患の第1位になったなどということを国民の何%の人が知っているか疑問です。さらに重要なことは、糖尿病では動脈硬化が極めて進行しやすく脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞を起こす例が糖尿病増加と共に著増していることです。医療費への圧迫も強く、平成9年には糖尿病の医療費は1兆円を超えており、透析、動脈硬化合併症の治療費を合わせると、さらに膨大なものになります。

 

糖尿病と言われる血糖値は?

合併症が起きる血糖値は食後血糖が1デシリットル中200ミリグラムぐらいからですので、随時血糖値200ミリグラム以上は糖尿病ですが、逆算して考えると、空腹時血糖126ミリグラム以上が糖尿病と診断される血糖値になります

 

糖尿病の2つのタイプ

日本人の糖尿病の95%はインスリン非依存型といわれるタイプです。この型は中年に発症し、肥満した体系が特徴です(2型に分類)。残り5%が若年者に発症する1型です。

 

生活習慣と2型糖尿病

日本人の糖尿病の増加は、肥満した2型糖尿病者の増加によって生じていることは明らかですが、肥満度をあらわすBMI(体重kg/身長m/身長m)でみると、50代男性は1950年で21.2、1995年では23.0と確実に増加しています。また糖尿病の増加は、面白いことに自動車保有台数の増加と同じパターンを示しています。自動車数の増加は歩行距離の減少を示しているといえるでしょう。単純に割り切れば、肥満と歩行距離の減少が2型糖尿病を増加させたとみなすことができます。

 

糖尿病増加をストップさせるには?

まず、検診をきちんと受けて自分の血糖値を知ることが大事ですが、(正常値は1デシリットル中110ミリグラム以下)正常上限以上ならば生活習慣を全面的に改める覚悟が必要です。

末病のうちに治す、といいますが肥満と運動不足が糖尿病増加の原因なのは明らかですから、BMIを1950年並み(糖尿病患者数は現在の1/15)まで減らす努力が有効です。50代165cmの男性で考えるとちょうど5キロの体重減少にあたります。血糖値が正常上限以上の人は、食事のカロリー制限と運動(1日の歩行歩数を3000歩増やすなど)によって5キロ減らすことが目標になります。個人的な意見ですが、30代以上の日本人が全員5キロ体重を減らすと、糖尿病や動脈硬化は激減することでしょう。

血糖値が高いといわれたことのある人はたいしたことないと思わずに、糖尿病外来を受診してみて下さい。