ME&YOU 4月号診察室

 

長時間、座り続けて発症

足を動かす工夫をしましょう

 

 

執筆

(医)福島厚生会 理事長
福島第一病院 心臓血管病センター
理事長 星野 俊一

 

エコノミークラス・シンドロームとは?

エコノミークラスは飛行機で旅行するときの普通席のことで、一寸せまい、きゅうくつな椅子席が連想されます。またシンドロームとは医学用語で症候群と訳され、一つの病気から同時に発生するいくつかの症状をさします。つまり旅客機などのきゅうくつな席にじ〜っと座っているときに起こってくる身体の変調を意味する言葉です。

 

どうしてこのシンドロームが話題になったのか?

エコノミークラス シンドロームという言葉は、2年前にハワイで開催された第3回太平洋血管シンポジウムで、はじめてとりあげられました。筆者も研究発表のために出席していたときでした。世界各地から多くの観光客がエコノミークラスで長時間かけてハワイにやって来ますが、その中にホノルル国際空港に到着したとたんかあるいは飛行中に、急に具合が悪くなったり、なかには死亡する人が発生する事態があり、これをエコノミークラス シンドロームと名づけました。そして日本でも成田国際空港の診療所では過去8年間に国際便で到着したばかりの旅客の25人が死亡し、うち12人が日本人であったこと、また世界全体では2000人位がこのシンドロームのため死亡したと推定されるなどニュースとして報じられ、話題となりました。

 

エコノミークラス・シンドロームの症状は?

このシンドロームの本態は、じっと長時間、足を動かさないと、足の静脈のなかに小さい血液のかたまり(血栓)ができることがあり、この血栓が次第に大きくなって肺の血管(肺動脈)につまってしまい、呼吸ができなくなってしまう状態です。これを肺塞栓症といいます。肺塞栓症は軽症のものから重症まで症状は様々です。軽症の場合は当人はまったく自覚しないこともありますが、せきが出たり、何となく息苦しい、胸が圧迫される感じなどの症状が出ます。重症になると胸が苦しくなり、がまんが出来なくなります。もっとひどくなると血圧は下がりショック状態に陥り、早期に適切な手当てをしないと死亡することもあります。

 

このシンドロームは飛行機に乗るときだけか?

エコノミークラス シンドロームはエコノミークラスの乗客だけに起るわけではありません。座席に余裕のあるファーストクラスの乗客にも起こりえます。ポイントは5時間以上も、じ〜っと座ったままで足を動かさない状態がリスクとなりますので、長距離の電車やバス・自動車でも起こることがあります。

 

どうしてこのシンドロームが起きるのか?

1日10万回も勢いよく拍動する心臓は、頭から足のつま先まで動脈という往路で血液を送り込み、毛細管を通して全身に酸素とエネルギーをとどけます。そして炭酸ガスや老廃物をもらい静脈という復路で血液は心臓まで昇ってきます。この際、足の静脈血は重力に逆らって心臓まで戻ってきます。その働きをしているのがふくらはぎの筋肉の収縮ですので、第二の心臓と呼ばれています。長い時間じ〜っとしていると第二の心臓が休んでいるので、血液は停滞し血液のかたまり(血栓)がつくり易くなります。そしてできた血栓は静脈の流れにそって、肺にとんでいき、肺動脈につまり、エコノミークラス シンドロームとなってしまいます。従って余り足を動かさない寝たきりの人や手術の後などにも起こるので注意しなければなりません。

予防する方法は?

飛行機や自動車に乗ったときにはシートベルトは安全のためにきっちりしめなければなりません。しかし足を動かさないと、第二の心臓はお休みになってしまうので、一工夫が必要です。まず長時間の旅行の際には1〜2時間毎に10〜20回位座ったままで、つま先立ちをするチクタク運動をくり返します。ふくらはぎやふとももを手のひらでマッサージすることも効果があります。もう一つの工夫は機内では特に乾燥するので適当な水分の補給をすることをおすすめします。酒類は脱水傾向となるのでほどほどにすることも大事なことです。  また寝たきりや病床にある人に対しては、足をやさしくつま先の方からひざやふとももの方向へマッサージしてあげることは、第二の心臓の役目をはたすだけでなく、スキンシップともなり好ましい効果となります。