福島民友新聞 ME&YOU 8月号掲載

 

原因はさまざま早めの専門医受診が大切

 

手指のしびれを訴えて当科を受診される患者さんが多くみられます。手指のしびれと言っても原因は多岐にわたります。脳、脊髄の中枢神経に原因があるもの、血管に原因のあるもの、その他さまざまです。今回はわれわれのクリニックを訪れる頻度の多い疾患についてお話します。

執筆

 

整形外科・リウマチ科部長
千葉 勝実

しびれとは

ほとんどの方が、長時間正座やあぐらをかいた後に足が動かなくなり、その後、回復過程でしびれが来た経験があると思います。あれがそうです。しかし、しびれを訴える患者さんのなかには、腫れ(むくみ)、こわばり(動かし始めに硬く、動かしているうちに柔らかくなる)、蟻走感(皮膚の上を蟻が走る感じ)などをしびれと表現する方がおられます。それらを分けて話されますと診断が楽になります。

親指がしびれる

親指と人差し指の掌(手のひら)側にしびれがある場合、手根管症候群が考えられます。これは手首の掌側の部位(手根管)にて正中神経が圧迫されることにより生じます。中年以降の手をよく使う女性に多く発症します。その他、手首の骨折の後やリウマチ、妊娠、良性の腫瘍(しゅよう)性疾患によっても起こります。症状は夜間に手のしびれのために睡眠を妨げられ、起き上がって手を振っていると楽になります。症状が進行すると親指と人差し指の掌側の感覚が麻痺し、親指の付け根の筋肉が痩(や)せて摘み動作が困難になります。従ってボタンの掛けはずしや針を持つことが不自由になります。手首を反らすと症状が悪化します。診断を確実にするために筋電図検査を行います。神経に弱い電気刺激を与えその伝わる速さをみます。遅れていれば診断はほぼ間違いありません。治療は軽い場合、装具などで手関節を固定したり、ステロイド剤の注射を行います。 重症になると手術を行います。小切開を加え、手首の掌側の部位(手根管)を開放する簡単な手術で症状が改善します。 親指の背側にしびれがある場合、橈(とう)骨神経麻痺と頚椎の5番・6番の障害が考えられます。前者は上腕部外側の圧迫や骨折の後、注射による場合が多いようです。麻痺が高度になると手首が背屈できなくなります(下垂手)。時に指のみが伸展できなくなります。 その場合は肘(ひじ)の部位で障害されています。後者の場合、筋力は手首の背屈が弱くなります。  

小指がしびれる

 小指の掌・背側にしびれがある場合、肘部管症候群と頚椎の七番・胸椎の一番の障害が考えられます。前者は肘の内側の所で尺骨神経が圧迫されることにより生じます。皆さんも時にこの部分を打ちつけて電気が走ったことを経験していると思います。原因は肘の骨折の後やリウマチ、変形性肘関節症、繰り返す刺激により生じます。良性の腫瘍性疾患によっても起こります。症状は手のしびれ、小指の感覚が麻痺し、小指の付け根の筋肉が痩せて小指の先端が親指に、小指の内側が薬指につかなくなります。さらに小指が十分に伸びなくなり細かな動作が困難になります。診断を確実にするために同様に筋電図検査を行います。治療は軽い場合、装具などで肘関節を固定したり、重症になると手術を行います。肘の後内側に小切開を加え、肘部管を開放し神経を前方に移動する簡単な手術で症状が改善します。後者の場合、指の末節を曲げる筋肉が弱くなります。筋電図検査を行えば、どちらの障害か区別可能です。

中指がしびれる

中指のしびれは頚椎の六番・七番の障害が考えられます。その場合、肘を伸ばす力が弱くなります。

手指全体がしびれる

今まで述べた狭い範囲のしびれはさほど心配要りませんが、手指全体、躯幹(くかん)や足にしびれを伴う場合は脳・脊髄、血管に障害があることが考えられ早めに専門医を受診してください。例えば頚椎部で軟骨や骨で脊髄が圧迫されたり、脊髄の内側に腫瘍・炎症があったり、脳こうそく、血管炎、糖尿病などのときがあり、寝たきりになる場合があります。