福島民友新聞 ME&YOU 6月号掲載

 

女性に多く多彩な症状

手術の安全性は極めて高い

下肢静脈瘤とは?

血管には心臓から押し出されたきれいな血液(酸素化された血液)が流れる動脈と、からだのいろいろな部分で使われた血液が心臓へ戻る静脈によって構成されています。
 下肢静脈瘤とは下肢表在静脈が異常に拡張した状態で、血管疾患(しっかん)の中で最も頻度の高い疾患であり、30歳以上では62%に何らかの静脈瘤が存在するといわれています。静脈瘤には、深部静脈血栓(けっせん)症など、明らかな基礎疾患がない一次性静脈瘤に分けられますが、後者が大部分を占めます。

執筆

 

心臓血管病センター長
緑川 博文

その原因は?

 一般的に考えれば、下肢から心臓へ(つまり下から上へ)重力にさからって血液が心臓に戻ることは、ありえないはずです。では、なぜこのような不思議なことが、おきているのでしょうか?
 それは、下肢に存在する筋肉が、歩行などの運動により血液を絞り上げる筋ポンプ作用と、下肢静脈に存在する静脈弁の働きにより血液は下から上にしか流れないようになっているのです。
 静脈瘤は、下肢表在静脈や交通枝(深部静脈と表在静脈をつなぐ静脈)の弁機能異常により血液の逆流が生じた結果、下肢静脈圧が高くなり静脈が拡張することによって生じます。

症状は?またどんな人がなりやすいのか

静脈瘤が存在するだけで、無症状の場合もありますが、多くは下肢がだるい、痛い、重い、むくむ、こむら返りなど血液がうっ滞しておこる多彩な症状を示します。
 また、どのような人がなりやすいかというと、性別では女性に多く、また加齢、妊娠、遺伝、肥満、便秘などが危険因子と言われています。生活様式としては長時間、あまり歩かないで立ちっぱなしの仕事(例えば理容師さん、調理師さん、スーパーなどお店のレジを担当している人など)の方々に多いといわれています。

どんな静脈瘤が治療対象となるのか?またその治療法は?

 一般的には、
@色素沈着、湿疹(しっしん)や潰瘍(かいよう)といった皮膚症状のある方。
Aだるさ、むくみなどうっ滞症状の強い方。
B静脈瘤に発赤、腫脹(しゅちょう=熱を伴う体のはれ)など静脈炎を起こした方。
Cきれいな足にしたいという美容的要望のある方

などが対象となります。
 保存的治療法としては、弾力ストッキングや弾性包帯による圧迫療法がありますが、これは悪化予防効果はありますが、静脈瘤を治癒(ちゆ)させるものではありません。
 一方静脈瘤を積極的に治療する方法としては、硬化療法と手術療法があります。硬化療法とは、硬化剤を静脈瘤内に投与して静脈瘤をつぶす治療法で、低侵襲で外来通院で可能であることが利点ですが、広範囲で逆流の強い静脈瘤などでは十分な効果が期待できないなど、その適応には制限があります。
 手術療法には、弁機能不全をきたした表在静脈を抜去するストリッピング術、不全交通枝を結紮(けっさつ)する手術、また当センターなどが、日本に先駆けて行ってきた機能不全をきたした静脈弁を形成し表在静脈を温存する弁形成術などがあります。
 さらに、いずれの手術療法もその安全性は極めて高く、また短期間の入院で治療は可能です。

最後に

 下肢静脈瘤は、命にかかわるような病気ではありません。しかし、ここでのべてきた症状をお持ちの方々は、日々、大変不快なのではないでしょうか?また女性に多い病気ですから、きれいな足になりたいと思っていられる方々も多いのではないでしょうか?
 治療法は手術も含めて安全性は極めて高く、また短期間の入院で治療可能ですので、ぜひ一度お悩みの方々は専門医にご相談下さい。