福島民友新聞 ME&YOU 5月号掲載

 

破裂した場合、高い死亡率

有効なステントグラフト内挿術

動脈瘤とは?

動脈瘤は、動脈壁が限局性に脆弱化、伸展し異常拡張をきたした状態、つまり動脈がこぶ状に拡張する疾患をいい、全身どの動脈にも発生します。例えば、脳動脈にも発生します。例えば、脳動脈瘤(これが破裂するとクモ膜下出血)、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤、内臓動脈瘤、四肢動脈瘤などがあり、どの部位においてもひとたび破裂すれば、死亡率の高い恐ろしい疾患です。 病因は、大部分が動脈硬化により発生しますが、他に炎症性、先天性、自己免疫疾患、外傷などによっても発生します。心臓血管外科医が関係するのは、大部分が胸部及び腹部大動脈瘤であり、その発生率は人口10万人に対し約4〜6人であり、これを福島県にあてはめると毎年約80〜120人が新たに増加していることになります。

執筆

 

心臓血管病センター長
緑川 博文

大動脈瘤はなぜ恐ろしい病気なのか?

その理由は、まず第一に破裂した場合の高い死亡率にあります。例えば胸部大動脈瘤の場合は50〜80%、腹部大動脈瘤の場合は25〜50%と言われています。 第二に大部分の動脈瘤の場合、破裂しそうにならないかぎり無症状であるため、医師にかかることがなく、患者さん自身が動脈瘤の存在に気づかないことも多くあり、破裂して初めてわかる場合も珍しくありません。

どのようにして診断するのか?

部大動脈瘤の場合、腹部の拍動性腫瘤では体表面から触ることは困難です。そのためレントゲン写真、エコー、CT、MRI、血管造影などを施行し正確な診断をつける必要があります。 また本疾患は、高血圧症との因果関係が強く、高血圧をお持ちの患者さんは、できれば心臓血管外科医で年に一度ぐらいは検査をなされば、破裂する以前の小さな動脈瘤のうちに見つけることが可能かもしれません。

治療法と最近の新しい展開

動脈瘤は以前は外科手術が唯一の治療法でした。動脈瘤を切除し、人工血管と呼ばれるパイプで置き換える手術が主流であり、現在も尚多くの施設で行われております。
 しかしこの治療法では、破裂前に手術を施行した場合の死亡率が胸部大動脈瘤で5〜10%、腹部大動脈瘤では3〜5%と比較的高い危険性を有していること、本疾患は高齢者の方々が対象になることが多いため、種々合併疾患(脳血管疾患、心疾患、呼吸器疾患など)を有する場合危険性はさらに高くなること、また長期入院の必要性から高額な医療費がかかること、さらに社会復帰の遅延など多くの問題点が存在します。
 そこでこれからの問題を解決すべく、近年になりステントグラフト内挿術が考案され、当センターも含めいくつかの施設で施行されるようになってきました。この治療法は、ステントグラフトという筒状の管を、鼠径部(足の付け根の部分)を約5cmほど切開し、カテーテルという管を挿入し、ステントグラフトを折り畳んで動脈瘤部位に運び、そこで開いて留置します。すると瘤が血流から遮断され、破裂を予防することができます。つまりわずかな切開のみで手術が可能であるため、患者さんの苦痛を軽減し、入院期間を短縮し、医療費軽減につながることとなります。
 しかしこの治療法は、まだ医療保険適応になっていないこと、適応に制限があること、施設が限られることなど多くの問題を残していますが、今後はステントグラフト内挿術が動脈瘤治療の主流になることは間違いないことと思います。

最後に

 動脈瘤は放置すれば恐ろしい病気ですが、適切に治療を行えば何も怖がることはありません。特にステントグラフト内挿術の登場により、今まで高齢だから外科手術は無理だといわれてきた患者さん、また多くの合併疾患のために手術の危険性が高いといわれてきた患者さんに対する治療が可能になってきました。当センターにおいても、近年では動脈瘤治療を受けている患者さんのほとんどは75歳以上といっても過言ではありません。もう年だからしようがないなどと思わず、ぜひ破裂しない前に病気を見つけ、思い切って治療を受けてみてください。