2016.7月号より

加圧トレーニング

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


 加齢とともに身体の筋肉が痩せ、脂肪が溜まってくる「サルコペニア肥満」は何とか回避したいものだ。脂肪細胞が肥大すると、身体に悪い働きをする悪玉サイトカインが分泌される。すると血管が収縮し、血圧を上げ、血栓ができ易くなり、動脈硬化に起因する生活習慣病、脳梗塞、心筋梗塞の誘因となる。サルコペニア肥満はむしろメタボより生活習慣病のリスクを高くする。
 近年、サルコペニア肥満対策として注目されているのが、「加圧トレーニング」である。短時間で軽い負荷の運動で筋力アップや血管の若返り、シェイプアップなどに効果を挙げている。
 加圧トレーニングのメカニズム
 加圧トレーニングは本来身体に備わっている原理を利用した日本発のトレーニング。腕と脚の付け根に専用の圧迫ベルトをつけ、そこを締め付けながら軽い運動をすると血液に疲労物質である乳酸が溜まり、成長ホルモンの分泌が促進する。成長ホルモンは筋力アップ、血管の弾力甦り、怪我からの回復力アップ、シェイプアップなどの効果が期待できるが、成長期を過ぎると分泌が低下してくる。
 なお、圧迫ベルトによる締め付けは、血液の流れを止めるものではなく、適正な圧迫を加えながら個人に合った腕や足の運動を行う
。  従来の筋トレとは異なり、極めて軽い負荷で1回当たり短時間、週1回のトレーニングで充分な効果が得られる。加圧トレーニングは指導資格を有するトレーナーとのマンツーマンで行うのがさらに効果的。現在は海外、特にアメリカで盛んに行われており、日本のトップアスリートたちの筋力アップにも取り入れられている。
 加圧トレーニングの効果
 加圧トレーニングを行うと増加する成長ホルモンによって太りにくい身体になり、脂肪が燃焼し易い体質になる。
 @筋力アップ
 筋肉には持久力を発揮する遅筋と瞬発力を発揮する速筋の2種類がある。遅筋を鍛えるためには軽い負荷のトレーニングを長時間続ける必要があり、一方、速筋は重い負荷のトレーニングによって鍛えられるため遅筋と速筋を同時に鍛えることはできない。
 これに対し、加圧トレーニングは短時間の軽い負荷のトレーニングで遅筋と速筋を同時に鍛えることができる特徴を有する。
 A血管の若返り効果
 加齢によって血管の弾力性が徐々に低下し、硬くなり、動脈硬化が進行する。血管は全身に酸素と栄養を運ぶ重要な役目を果たしているので狭くなったり詰まったりするのはできるだけ避けなければならない。加圧トレーニングは血管の拡張、収縮能力をアップさせ、弾力性を増加させる。血管の弾力性には一酸化窒素(NO)が重要な役目を果たしているが、加圧を繰り返すことでNOが産生され、血管内皮細胞が柔らかくなり、血管の弾力性が再生される。
 B回復力アップと若がえり
 加圧トレーニングの効果として成長ホルモンが増加するため骨折、肉離れ、捻挫などの外傷からの回復が早くなる。また、成長ホルモンの働きによって遅筋、速筋ともに筋肉量が増え、脂肪が燃焼し易い体質になる。結果、太りにくくなり、シェイプアップ効果が期待される。
 QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の維持・改善およびサルコペニア肥満予防対策として、短時間で軽い運動の加圧トレーニングは、中高年の健康維持や筋力アップ、若返り(肌のハリ・ツヤを取り戻す)などに効果が期待される。