2016.4月号より

ジカ熱

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


蚊が媒介するジカ熱の流行が中南米を中心に拡大し、世界的脅威となっている。今年8月にオリンピック競技大会が開催されるリオデジャネイロ(ブラジル)において、昨年5月からジカ熱が流行し、小頭症の発症が増加している現状が報告されている。こうした事態を受けWHO(世界保健機関)は2月1日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。ブラジル、エクアドル、コロンビアなどでは、流行地域の女性に対し半年〜1年以上は妊娠を控えるよう促している。
ジカ熱は小頭症の原因
小頭症とは、胎児の時期または出産時において脳と頭蓋骨が月齢に比べて異常に小さく、脳の発育不全のため大脳半球や頭蓋が極端に小さい状態を言う。知能や運動機能に障害が生じるため厳重注意が必要。最悪の場合、自力での生存が困難な場合もある。
ギラン・バレー症候群の原因にも
ブラジルでは手足の筋力低下と腱反射が消失するギラン・バレー症候群が約1年間に42例報告され、そのうち26例がジカウイルスによる感染が原因と疑われている。
ギラン・バレー症候群は手足の筋力低下をもたらす末梢神経障害で、休息に発症し、通常は2〜4週目でピークに達し進行は停止する。3〜6ヶ月目で回復するが、10〜20%の人に後遺症が残る。運動障害に比べて感覚障害が軽いのが特徴。
ジカウイルス感染症では小頭症が大きく報じられているが、ギラン・バレー症候群の神経合併症も重大な問題となっている。
ジカ熱は蚊が媒介
ジカ熱はヤブ蚊属のネッタイシマカやヒトスジシマカがジカウイルスを媒介する。感染した人から他の人に直接感染することはない。ネッタイシマカは日本には常在しないが、ヒトスジシマカは国内ほとんどの地域に生息している。仮に流行地でジカ熱に感染した人が国内で蚊に刺され、その蚊が他の人を刺した場合は感染する可能性がある。しかし、蚊は冬を超えて生息が出来ないので、限定された場所での一過性の感染となる。ヒトスジシマカは日中野外での行動性が高く、行動期間は5月中旬〜10月下旬までとされている。
ジカ熱の症状
ジカ熱は感染しても症状が出ないか軽く、2〜7日で治り、予後は良好。主な症状は軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛など。
ジカ熱の治療薬・予防法
ジカウイルスに対する特有の治療薬はなく対症療法のみ。予防接種については有効なワクチンは無い。
ヒトスジシマカやネッタイシマカは日中に活動し、藪や木陰などで刺されるので、屋外で活動する場合は長袖・長ズボンを着用し、虫よけスプレーを使用するのがおすすめの予防法。
日本におけるジカ熱感染症の現状
去る2月25日、ブラジルへの家族旅行から帰国した10代の男性がジカ熱に感染し、日本人では4人目の感染者として報告された。国内では今の時期に蚊は生息しないので感染のリスクは低いとし、対策本部は設置しなかった。
厚労省は新たにジカウイルス感染を4類感染症に指定した。4類感染症はデング熱や鳥インフルエンザと同等に届け出を要する感染症。
まとめ
ジカウイルスが本当に小頭症を引き起こすのか厳密に証明されたわけではなく、あくまで有力な仮説。アメリカ疾病予防管理センターでは、妊婦はリオデジャネイロオリンピックに行かないよう勧めており、慎重にも慎重を期すよう警告している。