2015.12月号より

医療の転換期―予防が大事

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


日本医学会総会は4年毎に開催され、今年は京都で開かれた。今年の総会のハイライトは「健康社会宣言2015関西」、病気の予防に力点を置く医療の転換が提示された。医療の専門化、高度化により医療が複雑化する一方、医療の地域格差も問題となって来た。日本の医学・医療を革新し、新しい未来を開くために官民が共に参画して、健康長寿社会を実現する必要があることを強調している。
日本の医療の現状
1961年、国民皆保険制度が確立。医療体制の整備と、医療提供者の努力もあって、日本は世界でトップクラスの福祉、長寿国となった。
基礎医学の研究も進展し、3人のノーベル賞受賞者を輩出した。体には、侵入してきた病原体を攻撃して病気にならないように働く「抗体」と呼ばれるタンパク質があるが、1987年利根川進先生は、その抗体がどのような仕組みで作られるのか等を遺伝子の研究から解明した。
山中伸弥先生はあらゆる細胞に分化する能力を持つ万能細胞を作り、これをiPS細胞と名付けた。この研究を基に神経、肝臓、心臓など種
々な体の細胞を作成し、再生医療の実現が期待されている。この研究業績により2012年ノーベル賞を受賞した。
大村智先生は2015年、伊豆のゴルフ場の土の微生物から「イベルメクチン」を開発し、3億人以上の感染症による失明を防ぎ、その功績が認められノーベル賞を受賞した。
健康社会宣言2015
今年の日本医学学会総会は、医学と医療の革新を目指して、健康社会と共に生きる絆の構築をメインテーマとしている。
2015年は戦後のベビーブームで生まれた人が全て65歳以上になる年であり、10年後には75歳を超えることになる。世界でも類を見ない急速なペースで超高齢社会を迎えた年でもある。健康長寿社会を実現するため、我が国の医学・医療を革新し、新しい未来を開いていかなければならない時代となってきた。
1.治療から予防へのパラダイム
・シフト
少子高齢社会においては病気の予防が何よりも重要、特に生活習慣病など加齢に伴う慢性疾患にあっては、異常が現れる前に予測し、発病前に介入する先制医療を目指さなければならない。つまり治療から予防へのパラダイム・シフトの転換の必要性が強調されている。それと共に高齢者が寝たきりにならないように筋力の維持、リハビリテーションなどの対策も進める必要がある。人間ドックは効率的であり、毎年受けて自分のデータを蓄積することが役立つ。自分や家族の病歴に合わせてセットするオプション検査はより効果的な病気の予防につながる。
2.オーダーメイド医療の推進
現在の画一的なレディメイドの医療から、個々人の遺伝素因、環境に基づいたオーダーメイドの治療法を選択することによって、個人の医療の負担が軽減できる。これを実現するために、3人のノーベル賞受賞に続く、更なる臨床疫学的研究の進展が期待されるところである。
3.少子化対策
少子化対策としては、妊娠、出産、子育てに関する正確な知識の普及、支援体制の整備も重要である。
4.地域医療の推進
病院と地域医療の連携体制の整備や、かかりつけ医を中心とした地域包括ケアの推進など自治体と協力して推進することを提唱している。

 各個人の健康づくりへの関心と努力が健康寿命の延長に繋がることは論を俟たない。