2015.11月号より

「フレイル」―回復と予防A

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


高齢者の陥るフレイル(虚弱・脆弱)を予防し、健康回復を図るポイントは「運動・食事」が基本。
 身体を動かす「運動」のすすめ
 年を重ねるごとに筋肉が減り、次第に身体の活動水準が低下する。高齢者の衰弱「フレイル」はそのまま介護に向かう状態と考えられてきたが、運動によって回復および予防が可能となることが分かって来た。
 筋肉の衰えを防ごう
 筋肉は体を支えたり、動かしたり、エネルギーを貯蔵する等の機能を果たしている。筋肉の総重量は体重の40%〜50%、成長するにつれて増加し、20才頃まで増え、その後少しずつ減少していく。筋肉量は筋肉を構成する蛋白質の合成が多ければ増え、分解が多ければ減少する。筋肉の合成には適切な食事、運動、男性ホルモン等が関係し、筋肉の分解には栄養不足、運動不足、メタボ等生活習慣病が関わっている。特に筋肉の合成と分解に関係するのが加齢で、年をとるにつれて、合成される量より分解される量が多くなる。70歳代では筋肉量は20歳代の4割程度に減少する。特に30〜50歳代の中年期においてあまり運動しないで過ごすと筋肉が急激に減少する傾向がある。
 筋肉量と寿命の関係
 75〜84歳の高齢者の歩くスピードと10年後の生存率を調べた研究によると、歩くのが遅いグループの生存率は女性35%・男性15%であったのに比べ、歩くのが早いグループの生存率は、女性92%・男性50%と大きな差がみられた。
 歩くのが早い人は長く生きられると云う結果が得られた。
 また筋肉が減ると転倒するリスクが高まるだけでなく、肺炎、感染症、糖尿病など様々な病気を発症するリスクも高くなる事がわかってきた。
 サルコペニアの予防
 サルコペニアとは筋肉量の減少を意味している。サルコ「筋肉」とぺニア「減少」というギリシャ語を組合せた造語で、筋肉量と筋力が低下した状態をいう。サルコペニアは65歳以上の高齢者に多く、特に75歳以上になると急に増えてくる。85〜90歳では男女ともサルコペニアの割合が60〜80%と半数を超える。サルコペニアになると歩く速度が遅くなるばかりでなく、転倒・骨折のリスクが増加する。日常生活で、着替え・入浴等がしづらくなり、病気にかかり易くなる。サルコペニアはフレイルを招き、その逆もしかりである。
 筋肉トレーニングのすすめ
 フレイルやサルコペニアになっていない人の予防対策なら散歩だけでも十分だが、自覚症状が感じられる場合では散歩のような有酸素運動だけでは不十分。できれば体力に応じた「筋トレ」の専門家によるメニューのもとに運動を取入れるのが重要。
 筋肉増強のための栄養
 筋肉量を増やすためには蛋白合成を活発にする必要がある。蛋白質やビタミンDには筋肉を増やす効果がある。筋肉量の低下がみられた要介護高齢者を対象とした調査では、週3回専門トレーナーについて筋トレだけをしたグループと週3回の運動に加えて蛋白質1日10gを摂取したグループでは、蛋白質+筋トレの合併グループの方が筋肉量増加の結果を得た。運動と共に栄養をきっちり摂る事が筋肉増強のポイント。
 筋肉量の増加には体重1s当り1.2〜1.5gの蛋白質摂取を目標とする事が必要で、動物性蛋白質と植物性蛋白質をバランスよく摂る事が大事。また筋肉に必要な栄養素としてビタミンDが大事。ビタミンDは体内にカルシウム吸収を促し、骨を増強すると共に筋肉を増やす作用もある。また、ビタミンDは日光に当たる事により体内で合成されるので、日光浴も大切である。