2015.10月号より

「フレイル」―加齢による衰え@

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


フレイルとは
 年を重ねるごとに筋肉が衰え、歩くスピードが遅くなり、握力も50歳を超えた頃から徐々に低下する傾向は否めない。今まで高齢者の衰弱はそのまま要介護や死亡に向かう状態と考えられて来たが、現在は運動や食事など積極的な対策を実行することによって、予防や回復も可能となって来た。後期高齢者(75歳以上)の多くは「フレイル」とういう中間的な段階を経て要介護状態に陥る。「フレイル」とは体の予備力が低下する事でストレスに対する脆弱性が増大し、生活機能障害、要介護状態に陥り易い状況を意味する。フレイルはFrailtyの日本語訳、虚弱・脆弱などとして使用されている。日本老年医学会はこれを統一した用語「フレイル」として提唱した。
 フレイルの考え方は介護福祉関係者に理解され始め、医療分野でも取入れられるようになって来た。厚労省は高齢社会の到来を控え、フレイル対策が必須と判断、高齢期の疾病予防、介護予防等を推進し、認知症総合戦略の推進、肺炎予防の推進、更に介護予防の推進に加え、フレイル対策を柱の一つと位置づけた。
 フレイルは要介護の中間段階
 フレイルが今注目を集めているのは、フレイルが自立した生活から要介護へ移行する中間段階に位置する一方、早期に対応する事によって、自立した元の生活に復帰できる可能性があるためであり、フレイルの早期発見と介入が要介護に陥るのを防ぐ防波堤になりうるためである。
 フレイルの兆候
 @体重が減る―特別な原因はないが、体重が2〜3s以上減少した。
 A疲れやすさの自覚―何をするのも面倒、何かを始めることが億劫になった。
 B活動量の低下―最近趣味の集まりにも出かけず、スポーツや運動もしなくなった。
 C最近、歩くスピードが遅くなった―横断歩道を青信号の間に渡るのが難しくなった。
 D筋力低下―握力が低下したり、2リットルのペットボトルを運ぶのが大変になって来た。またふらついて転びやすくなったなど。
 これら5つのうち3項目以上に該当すると「フレイル」と判断され、1〜2項目のみ該当の場合は前段階の「プレフレイル」と言われている。
 またフレイルは動作が遅くなったり、転倒し易くなったりする身体的問題だけでなく、認知機能の障害やうつ病などの精神的な問題、また独居などの社会的問題をも含んでいる。
 フレイルの判断
 桜美林大学鈴木隆雄氏はフレイルの分かり易い判断として、高齢者の歩行速度が1秒間に0.8メートル以下になると介護必要度のリスクが高くなると述べている。これは足の筋肉量ではなく、筋力が問題で、足を蹴り出す力の衰えが歩幅を小さくして歩行速度を遅くする。横断歩道の青信号は毎秒1メートルの速度で渡れるように設計されているので、青信号のうちに横断歩道を渡れなくなると要注意である。握力は50歳を超えた頃から徐々に低下する。過度に低下すれば、自分を支えるために手すりに掴まりにくくなり、転倒のリスクが大きくなる。
 介護が必要になる年齢と要因
 介護が必要になる状況として70歳代までは脳卒中が原因となるケースが圧倒的に多い。80歳以上になるとフレイルが増加し、90歳以上ではフレイルが30%を超える状況となるので、後期高齢者では特にその対策が重要となる。
 フレイルを防ぎ健康を回復するにはどうすれば良いか。基本になるのは「運動」と「食事」であり、次号に取り上げる。