2015.8月号より

マーズ(中東呼吸器症候群)の流行

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


韓国におけるマーズ感染事情
 2015年5月以降、韓国においてマーズの感染が広がり話題となっている。マーズの最初の感染者は今年(2015)4月末、バーレーンなど中東地域に出張後5月4日に仁川国際空港に帰国した68歳の韓国人男性。同11日に発症し、15〜17日韓国の平沢聖母病院に入院し、20日にマーズと確定診断された。当初韓国貿易当局はWHOのガイドラインに従い、2メートル以内の密接接触者のみを監視対象としたが、結果的には入院していた病院8階の滞在者に感染が広がった。マーズ感染者は6月には三、四次感染もみられ、7月には感染者は186人、死亡は33人。7月15日現在終息宣言は出ていない。
 韓国のマーズ感染拡大の要因
 WHOと韓国側の共同調査団は、情報公開や地方自治体との連携などの初期対応に問題があったとの見解を示している。初期対応の失敗が院内感染の大本になっているようだ。
 韓国の特殊な医療事情として、看護師ではなく、医学的知識のない家族や友人が看護する習慣や治療を受けても満足しない時には、次々と受診先を変える医療ショッピング患者が多い事なども問題のようである。
 マーズ(中東呼吸器症候群)とは
 マーズ(MERS)は2012年に初めて確認されたウイルス性の疾患。原因となるウイルスはMERSコロナウイルス。
 ウイルス感染のルート
 どのようにしてマーズが感染するかについては未だ正確にはわかっていない。マーズコロナウイルスと同一のウイルスが、中東のヒトコブラクダから分離されている事から感染源の一つとして疑われている。日本国内にいるヒトコブラクダの調査結果ではマーズコロナウイルスを保有しているラクダは確認されていない。一方患者さんの中にはラクダと接触歴がない人も多く含まれている。
 マーズはどこで発生しているか
 主として中東地域(アラブ首長国連邦、イエメン、イラン等)で発生しているが、ヨーロッパ(イタリア、英国、オランダ等)、アフリカ、アメリカ、アジア(韓国、フィリピン、マレーシア、中国など)でも発生している。
 マーズの症状
 感染後潜伏期間は2〜14日間。その後発熱、咳、息切れが主症状で下痢などの消化器症状を伴う場合もある。マーズに感染しても症状の出ない人や軽症の人もいるが、高齢者、糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などのある人では重症化する危険がある。
 マーズの死亡率
 世界保健機関WHOの調査ではマーズの死亡率は約40%と高い。2003年に流行した重症呼吸器症候群(SARSサーズ)の死亡率約11%と比べはるかに高い。
 マーズの治療
 現時点では有効なワクチンや治療薬はない。対症療法として肺炎防止のため抗生物質、輸液などで症状の寛解をはかっている。
 マーズにかからないために
 マーズの発生が報告されている地域においては咳やくしゃみ等の症状がある人との接触を避け、またラクダ等の動物との接触は避けることが必要。咳や発熱などがある場合は、他者との接触は最小限とする。また「咳エチケット」は必須、@マスクをするA咳、くしゃみの際はティッシュペーパー等で口と鼻を押さえ、他の人から顔を背けるB使用したティッシュペーパーはごみ箱に捨て、手を洗う。マーズ発生が報告されている地域に渡航する場合は糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの持病のある人は医師に相談することが賢明な策でしょう。