2015.7月号より

「塩分」の功罪

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


厚生労働省は毎年国民の身体の状況や生活習慣状況を公表し、健康増進を図るため毎年実施している。その中で福島県の20歳以上成人の食塩摂取量は男性が12.1gと全国平均11.3gを上回っており、女性では9.9gと全国平均9.6gより若干多めであった。日本では醤油や味噌等の食塩系調味料を多く使用しているため、諸外国の食塩摂取量の目安1日5gを日本に適応するのは難しいのが現実。
 塩分の役割
 人間の体液は約0.85%の塩分濃度(生理食塩水と同じ)に保たれており、ナトリウムとカリウムによって調節されている。「塩」の働きとしては体液の塩分濃度の調節、栄養素の消化、吸収のサポートなど重要な役目を果たしている。
 体に必要な塩分量のバランス
 厚生労働省推奨の食塩摂取量は、成人では男性1日9g未満、女性1日7.5g未満。高血圧で治療を必要とする人は1日6g以下、腎臓疾患1日5〜8gとされている。
 塩分は汗や便、尿によって体外に排出される。汗や便に含まれる塩分量は2〜5%で残りは尿から排出される。激しいスポーツをしている人や汗をかくことが多い仕事をしている人にとっては、水分補給は重要であり、また同時に塩分補給が必要。
 塩分を摂り過ぎると…
 @のどが渇く
 摂取した塩分は体内でナトリウム成分が骨や血液、消化液などに運ばれるが、過剰になると塩分濃度が高くなり、これを薄めようとするため水が必要となり、のどが渇く。
 A血圧が上がる
 体は塩分濃度を薄めようとするために、汗や尿などから水分の排出を抑える。このため細胞外液(血液)に水分が多く取込まれ、血液量が増すので、血圧が上がる。塩分摂取量が多い福島を含む東北地方などに高血圧が多いのはこのため。
 B体がむくむ
 水分を多く取込もうとして、溜め込んだ水分が細胞周囲に溜り、体にむくみが生ずる。
 塩分不足になると…
 体にナトリウムが不足すると細胞内や骨に蓄えられていたナトリウムが血液、リンパ液、胃液などの消化液に放出されるが、体に塩分が不足すると以下のことが起こる。
 @めまいやふらつき
 体内の水分量が減少すると血液量も少なくなり、脳への酸素供給が減少し、めまいやふらつきが起こる。
 A食欲減退、脱水感
 塩分摂取が不足すると、体内塩分濃度が低くなることから血液や消化液が少なくなる。消化液の減少で消化できる食物量も少なくなるため、だんだん食欲がなくなる。食事量が減るので栄養摂取量も少なくなり、体がだるくなり、脱力感が生ずる。
 脱水症状や筋肉のけいれん
 スポーツや汗を大量にかく仕事をしている時は塩分も一緒に排出され、体内の塩分濃度は低くなる。水分を補給しても塩分の補給が十分でないと、体は低い塩分濃度に合わせるため更に水分を排出する。結果として脱水症や熱中症などが発症する。同時に筋肉からもナトリウムが奪われるため、けいれん発作を起こす。
 精神障害や昏睡状態
 水を大量に飲んで体内の塩分濃度が一気に下がると、神経伝達が正常に働かなくなり、昏睡が続き、刺激に対する反応が極度に鈍くなり、嗜眠や意識障害が生ずる。
 現在市販されている食塩のほとんどは生成された塩化ナトリウム99%以上で、ミネラルは非常に少ない。岩塩や海水を蒸発させて生成された食塩にはナトリウム以外にマグネシウム、カリウム、カルシウム等が含まれ天然塩として重宝されている。