2015.3月号より

『 デング熱とエボラ出血熱 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


 昨年デング熱やエボラ出血熱などウイルス感染症の感染拡大が注目を集めた。1970年以後ウイルス感染症は20数種類にも及んでいる。
 ウイルスとは何か?
 ウイルスは細胞を持たず、他の生物を利用して、自己を複製させることのできる微小な構造体で、タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなっている。生命の最小単位である細胞を持たないので、非生物とされることもある。ウイルスは他の存在なくしては自己複製できないため感染・増殖を繰返し、宿主に様
々な病気を引き起す。このため、感染は社会にもたらす影響が大きく脅威とみなされている。しかしウイルスベクター(遺伝子の運び屋の役目)として遺伝子組換え技術に於いて医療分野での利用は、むしろ恩恵を受けているという側面もある。
 デング熱
 デング熱は蚊(ネッタイシマカやヒトスジシマカ)が媒介する。従来の流行域は主に熱帯域でネッタイシマカの分布領域と一致していた。ところが昨年8月28日に海外渡航歴がないデング熱患者が発生し、約160例の発生をみた。今回国内感染を媒介したと考えられるのはヒトスジシマカで、主に青森県以南の各地域に生息している。卵で越冬し、梅雨の頃に多く発生する。成虫の寿命は約1ヶ月。地域にもよるが活動期は5月〜10月下旬。主に日中屋外で吸血し屋内にも侵入する。基本的な栄養源は花の蜜や植物の汁。吸血するのは産卵期のメスのみ。
 潜伏期間は3〜7日、突然の高熱で発症する。初期症状として頭痛、眼窩痛、顔面紅潮、結膜充血を伴う高熱が2〜3日続く。進行すると全身の筋肉痛、関節痛、全身倦怠感がある。解熱期には胸部・体幹部から発疹が出て四肢・顔面に広がる。出血やショック症状を伴う重症型はデング出血熱と呼ばれ死に至ることもある。高度の白血球減少、血小板減少がみられる。病勢を乗切れば2〜4日の回復期を経て治癒する。ヒト間の直接感染は無い。有効な抗ウイルス薬・ワクチンは現段階では無い。
 エボラ出血熱
 2014年3月エボラ出血熱の集団発生がギニアが発端となって、リベリアシェラレオネに広がった。患者数は1万5千人、死亡者は5千を超えている。WHOは十分な対策を講じなければ患者は2万人を超える恐れがあると指摘している。
 リベリアではエボラ出血熱の流行は限定的かつ散発的であったことから大規模な流行は発生しないと予想されていた。しかし6月国内での感染が拡大し累積患者数は最多となった。原因は長年の紛争、医療機関や医療者の極端な不足、上下水道の不整備、マラリアの多発など社会基盤が脆弱で、感染症対策の基本とされる患者の早期隔離と治療、接触者調査を行えなかったことが原因。
 エボラ出血熱の診断
 診察時に38℃以上の発熱があり、発症前21日以内に海外旅行か海外居住歴がある事、またはエボラ出血熱と強く疑われる人またはその遺体との濃厚接触歴(治療や看護、血液、体液との接触)がある場合には検査室にエボラ出血熱の可能性があることを伝え、緊急検査を行う。意識障害、出血症状、激しい嘔吐・下痢がある場合には感染防止対策を強化する。第一種感染症指定医療機関と協議、指定医療機関への早期転院を考慮する必要がある。
 人類は今までウイルス感染症に負け続けてきたわけではない。古代エジプトのファラオから孝明天皇まで、多くの命を奪ってきた天然痘は1796年ジェンナーの牛痘接種で制圧した。今後更なるウイルス感染症の研究に期待するものである。