2014.9月号より

『 健診の基準が変わる? 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


 今年の4月日本人間ドック学会と健康保険組合連合会は新たな健診の基準範囲を発表した。150万人のメガスタディーによるものであったので新聞や週刊誌に大きく報道され話題になった。健康診断や人間ドックで「異常なし」とする基準値が広がると報道されたため、診断や治療に疑問が生ずる事態が生じた。しかし学会、健保連が発表したのは、あくまで健康診断や人間ドックで用いられる「検査値の基準範囲」であって「判定基準」あるいは「疾患判別値」とは別物。健康診断や人間ドックにおける従来の判定基準を変更するものではない。これは「健康の目安」と考えた方が無難なようだ。
 肥満指数(BMI)
 BMIの現在の基準値は従来男女とも25以下。25以上は肥満とされている。人間ドック学会の基準では男性18.5〜27.7、女性16.8〜26.1と緩やかになっており、小太りやぽっちゃりタイプは許容範囲としている。
 血圧
 収縮期血圧は従来130mmHg未満、拡張期血圧85mmHgとされている。学会の基準範囲では収縮期血圧88〜147mmHg、拡張期血圧51〜94mmHg。収縮期血圧は147mmHgでも異常なしとなるが、各個人の持病や体質によっては必ずしも安心できない。
 収縮期血圧は心臓が収縮した時に送り出された血液が大動脈に流れ込む時の圧力。たとえ正常値であっても日内変動が大きいのは注意する必要がある。血圧がこの範囲内であっても乱高するようなら黄色信号。突然死を招く脳卒中はたとえ一命を取りとめても深刻な後遺症を残し、要介護になる最大の原因となっているので油断は禁物。
 コレステロール
 総コレステロールの現在の基準値は140〜199、学会の基準値は男性151〜254、女性は年齢によって差はあるが65〜80歳では280でも範囲内としており大幅に緩くなっている。総コレステロールは肝臓で作られ、細胞膜を構成したり、胆汁酸や性ホルモンを生成する重要な物質だが、多すぎると動脈硬化の原因になる。
 HDL(善玉)コレステロールは血液中の余分なコレステロールを肝臓に戻す運搬役。少ないと脳梗塞、心筋梗塞などに進行する。HDL値については学会発表の基準値とは大きな差はない。
 LDL(悪玉)は組織にコレステロールを供給する運び屋。現在の基準値119以下。学会の基準は男女とも大幅に緩くなり、年齢により変動するが、180〜190とかなり緩くなっている。
 TG(中性脂肪)は食事で摂る他肝臓で糖質より合成される。余分の中性脂肪は皮下脂肪、内臓脂肪として蓄積し、糖尿病、脂肪肝の原因となる。中性脂肪の学会の基準値は男性ではかなり緩くなっているが、女性では却ってきつくなっている。
 健康診断の基準値の見方
 人間ドック学会の発表した基準値は自称健康人のある時点でのデータを集計した結果のようだ。従って疾患の発症リスクを判定するものではないと理解するのが賢明のようだ。