2014.6月号より

『 熱中症 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一



 熱中症は高温環境のもとで体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体の調節機能が破綻する等で死に至る可能性のある病態。応急処置を知っていれば救命する事ができるし、予防法を知っていれば防ぐ事もできる。環境省は熱中症環境保健マニュアル2014年3月改定版を発表した。
 熱中症とは
 人は36〜37℃の狭い範囲に身体の温度を調節している恒温動物。体は運動や体の営みによって常に熱が産生されるが、同時に体には異常な体温上昇を抑える効率的な調節機能も備わっている。熱の産生と放散とのバランスが崩れてしまうと体温が上昇する。このような状態が熱中症。
 どのようにして起るか
 暑い時には自律神経を介して末梢血管が拡張、皮膚に多くの血液が流れ、外気への熱伝導により体温低下を図っている。また汗を沢山かけば汗の蒸発に伴って熱が奪われるから体温の低下に役立つ。このように体内の血液分布が変化し、体から水分や塩分が失われる状態に対して適切な対処ができない場合、筋肉の腓返り(硬直)や脳貧血が起る。熱の産生と放散のバランスが崩れると体温は著しく上昇し、熱中症になってしまう。
 どんな症状が出るか。
 熱中症の重症度は具体的な治療の必要性からT〜V度に分類される。
「第T度」―めまい、失神という状態。脳への血液が瞬間的に不十分になったことを示し「熱失神」とも呼ばれる。筋肉痛・筋肉の硬直(腓返り)でその部の痛みを伴う。発汗に伴う塩分(ナトリウムなど)の欠乏による。現場での応急処置で対応できる軽症。
「第U度」―頭痛・嘔吐・虚脱感。体がぐったりする、力が入らない等があり軽い意識障害を認めることがある。直ちに病院へ搬送する必要がある。
「第V度」―意識障害・けいれん・手足の運動障害。呼びかけや刺激への反応がおかしい。全身のけいれん。
「高体温」―体に触れると熱い感触。肝・腎機能異常、血液凝固異常等。
 現場で確認すべきことは、意識がおかしい場合には病院へ搬送、集中治療が必要となる。
 日常生活での注意
 熱中症は例年梅雨入りの頃から梅雨明けまで多発する傾向がある。人が上手に発汗できるようになるには暑さへの慣れが必要。暑い環境で運動を始めてから3〜4日経つと、汗をかく自律神経の反応が早くなって体温上昇を防ぎ、更に3〜4週経つと汗に無駄な塩分を出さないようになり、熱けいれんやぐったりする症状が生じるのを防ぐ。このように急に暑くなった日に屋外で過ごしたり、久しぶりに暑い環境で活動した人、涼しい地域から暑い地域に旅行した人は熱中症になり易いので、暑い時には無理をせず、徐々に暑さに慣れるよう工夫することが大事。日頃からウォーキング等で汗をかく習慣を身につけて暑熱順化していれば、夏の暑さにも対抗し易くなり、熱中症にもかかりにくくなる。暑熱順化は汗をかかない季節からでも、少し早足でウォーキングし、汗をかく機会を増やしていれば予防効果も期待できる。
 エアコンは28℃を超えない温度が適切で、設定温度が24℃を下回ると外気温と室温差が大きく、部屋に出入りする際に身体の負担になる。またエアコンの気流は冷気が直接人に当たらないよう注意する。
 暑い日には、身体の活動強度に関わらずに水分と塩分を補給することが大事。汗で失われた水分をビールで補給しようとするのは誤り。一旦吸収した水分以上が尿に出てしまうので要注意。