2014.5月号より

『 人はどうして太るのか 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


 日本人の太った人の割合はここ数年増加傾向は頭打ちだが、男性で約30%、女性では約20%。男性の場合は過去30年で12ポイントも増えた。日本人全体のカロリー摂取量は減り続け、運動習慣のある人の割合が増えている現状にもかかわらず肥満者数は減る兆しはない。
 肥満とは?
 肥満とは単に体が太っているという意味。医学的にいうと体の脂肪が一定以上多くなった状態。人の身体は様々な物質からできている。肥満の場合は脂肪の割合が多過ぎる事。体重の多い力士、プロレスラー、ハンマー投げの選手などトレーニングにより筋肉や骨の割合が多い人は、脂肪が少ないから肥満ではない。
 肥満と痩せ
 古代文明に残る絵画や土偶に見る人物像に肥満型が多く見られるのは、飢餓や戦いにおける生存の為のたくましさ、強さの象徴体型とも思える。現代においても日本やアジアでは太った男性は恰幅がよく、貫録があるというように肥満に対して寛容でポジティブな評価がある。しかし一方欧米の文化は肥満に対して厳しく、ネガティブなイメージが強いようだ。
 脂肪は悪玉?善玉?
 脂肪細胞は沢山の脂質を蓄えて、必要に応じて他の臓器に脂質を与えるリザーバーの役目を果している。従来の脂肪組織は単に脂質を蓄えている臓器と考えられていた。しかし最近の研究によれば脂肪組織からは食欲を制御するレプチンや様々な生理活性蛋白質(一種のホルモン)であるアディポサイトネクチン等が続
々と同定され、現在では脂肪組織は重要な内分泌臓器の一つと考えられるようになってきた。
 アディポネクチンは動脈硬化の進行を防ぎ、動脈硬化による狭心症、心筋梗塞の発症を低下させるデーターもある。脂肪組織が肥満すると善玉アディポネクチンが低下し、動脈硬化は促進することになる。
 肥満は遺伝?体質?
 頑張ってダイエットしても体重の減らない人もいれば、「痩せの大食い」のようにいくら食べても太らない人もいる。これまでの研究では体重は50〜70%が遺伝因子の関与によるとされている。遺伝子レベルで肥満を理解するキーワードには次の2つの説がある。
@エネルギー倹約遺伝子説
 食物の供給が不安定な厳しい自然環境の中で生きる動物には、余剰エネルギーを効率よく蓄えて生存の可能性を最大にする生き物が獲得している遺伝子のせいという説。人類の歴史は飢餓との戦いだった。十分な食糧を確保するのが困難な環境では、少ないエネルギーで生存でき、又少しでも余分なエネルギーがあれば、それを脂肪として体内に効率よく蓄えることが出来る体質(遺伝素因)を持った生物が生存して来た。従って脂肪はいざという時のエネルギー源であるので、過剰なカロリーを効率よく脂肪に変え、エネルギーを蓄積できる体質が必要とされた訳である。逆に飽食の現代においてはエネルギー倹約因子に相当する遺伝子を持つ人は肥満になり易い事になる。
A脳による体重コントロール説
 近年の分子生物学によると、脳で食欲とエネルギー消費のバランスがコントロールされているという説。体脂肪が過剰になると脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンの濃度が高くなり食欲抑制およびエネルギー消費増大が生じる為に、その結果として体脂肪が減少するように調節されているという説。
 遺伝子の発現は年齢によって異なり、かつ環境の影響を受ける。従って肥満の責任をすべて遺伝子が決定するわけではない。自己責任も大いにあるようだ。