2013.10月号より

『 日本一長寿県「長野」のひみつ 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


平成22年国勢調査による都道府県別平均寿命、生活習慣の状況が厚労省から公表された。それによると長野県が男女ともに長寿日本第一位に輝いた。男性は80・88歳、全国平均より1.29歳長寿、女性は87・18歳、全国平均より0.83歳長寿であった。福島県は男性が44位、長野県より2.04年短命、女性は38位、1.13歳短命であった。このデータは東日本大震災以前のものであり、福島県民としてその差は検討に価する状況と考える。

長野県医療の過去・現在
長野県が長寿の県として注目されてきたのはここ2〜3年のことで、以前は塩分摂取量が多く、高血圧のため脳卒中の死亡率は日本トップクラスであった。特筆すべきは農村医療の先駆者若月俊一のリーダーシップである。若月は東京出身であったが、長野の農村住民の中に積極的に入り込み、無医村への出張診療、在宅診療に取組み、精力的に活動し、現在の農村医学のメッカ佐久総合病院の基礎を築いた。「予防は治療に勝る」の信念のもとに衛生活動の啓発に努め、住民の生活に密着した診療活動を行った。この先駆者の啓蒙努力が実を結んだものである。農村医学に尽くした功績により、アジアのノーベル賞ともいわれるマグサイサイ賞を受賞した。

長野の生活環境
長野は海に面しておらず、日本アルプス等日本を代表する高山に囲まれており、農地はほとんど300m以上にあるといわれており、高地野菜が最近話題になっている。一方、長野には海がないので魚の消費量が少ない。魚油に含まれるオメガ3脂肪酸(EPA、DHAなど)は血液をサラサラにして心臓病等の予防に効果がある健康食品であるが、実際には魚消費量が少ない長野県人の血液にはオメガ3濃度が高値である。これは魚由来のものでなく、植物性のエゴマ油(しそ油)等に含まれるオメガ3によるものと推察される。
長野の多くの市町村では冬の冷え込みが厳しい。昼夜の温度差もかなりあり、このような環境で栽培された高地野菜は抗酸化作用や免疫力を高める栄養素フィトケミカルを多く含んでいるので人気が高い。フィトケミカルはポリフェノールやカロチンなど老化現象の予防に有効な成分を含んでいる。長野の野菜摂取量は一日379gと全国で最も多く、リンゴやぶどう等果物の摂取量も多い。ぶどう等に含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロールは長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子を活性化し、長寿をもたらすという事実が最近わかって来た。
また長野は発酵食品の味噌の消費量が日本一という。味噌汁を飲む回数の多い人は胃ガンによる死亡率が低くなるという調査結果がある。味噌の成熟に伴うメイラード反応には身体のさびを防止する抗酸化作用があり、これが活性酸素を消去する。最近味噌には美肌効果、肌の保湿効果やキメを改善する効果のある事もわかって来た。しかし味噌には塩分が含まれているので、高血圧予防の観点から塩分の過剰摂取には充分気をつける必要がある。

長寿と健康寿命
病気で寝たきりになったり、介護が必要になる期間を除いて、元気で自立した生活を営める期間を健康寿命と称する。人生をエンジョイするためには実質的に健康寿命を延ばすことが最も重要である。日常生活に制限のある期間は長野県では長寿日本一といっても男性9.81年、女性13.23年と長年月に及んでおり、手放しでは喜べない状況のようだ。福島県では日常生活に制限のある期間は男性8.95年、女性12.09年であり、ほぼ同じレベルにある。健康寿命を延ばす事こそが今後の最重要課題であろう。