2013.8月号より

『 塩分には気をつけて 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


生物の進化の過程で海から地上に上がった生物の中で、ヒトだけが料理するようになり、塩や調味料を使う事を覚えた。高血圧は人類が塩の味を覚えた時に始まったと云っても良い。塩を多く摂ると、血中のナトリウム濃度が上昇し、体のセンサーはのどが渇いたという信号を脳に送り水を飲む。水を飲むと血液のボリュームが増えると同時に、レニン、アンギオテンシン経路が血管を収縮させ、血圧を上げることになる。食塩感受性が高いと高血圧になりやすく、日本人は食塩感受性が高い遺伝子を持っているといわれている。

体に必要な塩分量
生活習慣病の高血圧予防の観点から、WHOでは1日当り5g以下の食塩摂取を推奨している。日本人の食事習慣では味噌や醤油が必需品であり、9g以下が目標と甘くなっている。しかし高血圧の治療を要する人では6g以下に、腎臓病の人では5〜8gに制限される。
過度な塩分制限は問題あり
からだの中でナトリウムが不足すると、細胞内や骨に蓄えられているナトリウムが細胞外に放出され、塩分濃度を調節する仕組みが働く。

塩分摂取が不足すると
「めまい・ふらつき」 塩分が不足すると、体は塩分濃度を保つため汗や尿からの排出を制限し、体内の水分を少ない状態に保つ。体の水分量が減ると血液量も少なくなるので、脳への酸素供給が減り、めまいやふらつきが起る。
「食欲減退・脱力感」 体が低塩分濃度になると消化液分泌が少なくなる。当然消化できる食べ物も少なくなり、食事量も減る。そのため食欲不振や身体がだるくなる。
「脱水症状・痙攣」 大量に汗をかくと塩分も一緒に排出され、体内の塩分濃度が低くなる。水分と同時に塩分補給をする事が重要である。体は低い塩分濃度の為水分もたくさん排出しようとするので、体内水分は更に不足し、脱水症状や熱中症、痙攣などが起る。

塩分を摂り過ぎると
「血圧が上がる」 塩分を過剰に摂取すると塩分濃度を薄めようとしてのどが渇き水が欲しくなる。また細胞外液(血液など)に水分を多く取り込もうとする為血液量が増え、そのため血圧が高くなる。
「腎臓に負担」 ナトリウムの排出は腎臓の濾過機能によって行われるので、腎臓に余計な負担がかかることになる。濾過機能の衰えは、腎臓疾患の原因になる可能性がある。
「不整脈」 ナトリウムはカリウムと一緒に細胞内を移動する仕組みで、電気刺激を細胞に伝え、筋肉の伸縮を行っている。心臓は心筋に電気信号が伝わる事で収縮し、血液を搬出する。塩分過剰な状態が続くとこの電気信号に異常が起り、不整脈を起こす可能性がある。

塩分摂り過ぎの対策
塩分の排出を促すカリウムはナトリウムと共に、水分を引き付けて細胞の浸透圧を維持している。カリウムを含む食べ物と水分を同時に摂ることで、体内の塩分は水分と一緒に尿として排出される仕組みを応用する。結果として血圧上昇を抑制し、筋肉の収縮を円滑にし、腎臓で老廃物の排泄を促す。
カリウムの多い食べ物を摂る

 塩分の多い食事の後にはカリウムを含んだ果物等を摂る。カリウムを多く含む物としては、トマトジュース(無塩タイプ)、柿、バナナ、キウイフルーツ、グレープフルーツ、メロン、梨等がある。但し糖尿病やカロリー制限中の人は気をつけて。カリウムの多いおつまみとしてはアボカド、ほうれん草、枝豆、かじきマグロ、かつをの刺身等々。但し量はほどほどに。