2013.5月号より

『  <健康寿命> 男70歳 女74歳 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


 人が一生のうち、介護を受けたり病気で寝たきりになったりしないで、日常生活を送れる期間を「健康寿命」と称している。単に寿命を延ばすだけでなく生活の質を重視する考えから、世界保健機関が10年以上前に提唱したものだ。


 「平均寿命」は、その年に生まれた子供が平均で何歳まで生きられるかを予想した数値で、各国で最新統計から算出している。日本の状況をみると日本では男性は79・44歳で、世界第8位、世界トップの香港より約1年短い。女性は85・90歳、長寿世界1位の香港86.7歳と比べ約1年短く、世界1位から2位に陥落した。厚労省の人口動態統計によると男性の平均寿命の短縮は、多数が死亡した東日本大震災が大きく影響したと説明、一方女性については自殺者が特に20代で多かったことが平均寿命を引き下げたとしている。男女とも平均寿命世界一になったのは香港。香港のGDPは先進国並であり、高い医療水準を支えている。香港大学の葉兆輝教授は、平均寿命が高い要因は1歳以下の小児の生存率が高いことが大きく、更に地震のような天災が無いうえ、医療制度も充実しているからと述べている。


 厚労省は始めて日本の2010年の健康寿命を発表した。日本全国で男性70.42歳(平均寿命79.55歳)、女性は73.62歳(平均寿命86.30歳)。平均寿命と健康寿命の差は男性9.13年、女性12.68年と大きく開いている。福島県では健康寿命は全国34位69.97歳、女性では16位74.09歳と全国平均より短い。男性の健康寿命はトップの愛知県より1.77年短く、女性ではトップの静岡県より1.23年短い。平均寿命との差が大きければ大きいほど健康面に支障を抱えて暮らす期間が長くなる。その差が最も小さいのは男性は秋田県(7・79年)、女性では群馬県(10.61年)であり、最大は男性で大分県(10.3年)、女性は広島県(14.55年)で気候のせいばかりではなさそうだ。福島県を含む地域格差の解消は今後の重要な課題と思われる。


 「健康寿命」は世界保健機関(WHO)が2000年に提唱した概念である。厚労省は社会の高齢化が加速する中で、「健康に長生きすることを重視し、13〜22年度の国民の健康づくり計画案に「健康寿命を延ばす」目標を掲げている。計画では、一日当りの食塩の平均摂取量を10.6gから8gに減らす。野菜の平均摂取量を282gから350gに増やす。運動面では20〜60歳の1日当りの歩数は男性7841歩、女性6883歩から、男性9000歩、女性8500歩に引き上げる等食事や運動に具体的な数値目標が盛り込まれるようだ。計画達成には生活習慣の発想転換が必要のようだ。


 平均寿命は年々延びており、今や100歳を超えた方々が5万人おいでになる。首長さんが花束をもって自宅や施設を訪問され、百寿者となられた人を祝福している新聞記事も時々目にする。しかし病床に伏しておられる人、或は認知症の人達への訪問記事はあまり目にしたことはない。百歳を超えた人達がどのような健康状態にあるか知りたいものだ。


 ある著名な宗教学者によれば、人生50年の時代には「生と死」は同じ比重の「死生観」であったが、両者の間に「老と病」が入り込んだために多くの人が戸惑い、手探りの状態にあると述べている。
今注目を浴びている「アンチエイジング医学」の目的は、元気で長寿を享受する事を目指すものであり、実践的医学としている。一般に避けられないと考えてきた老化現象のかなりの部分が、病的な要素を含む場合があり、積極的な予防対策や治療で対処できることが次第に分かってきた。「未病」のうちにどのように体をいたわるかがポイントのようだ。