2013.2月号より

『 内臓脂肪―健康の黄色信号 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


内臓脂肪と皮下脂肪  
内臓脂肪は内臓に脂肪が溜ったと思いがちだが、内臓脂肪は腸間膜という腸を包んでいる薄い膜と膜の間に溜る脂肪のこと。食べた栄養物を吸収するため血管が多く集まっている。一方皮下脂肪はエネルギーの貯蔵、身体のクッション、保温効果などの役目を果たしており、内臓脂肪に比べ代謝は鈍い。女性では一般に太っていても皮下脂肪が多く、内臓脂肪が少ない人が多い。男性では30歳を過ぎると内臓脂肪が溜る傾向が強くなりメタボの危険性が高くなる。肥満した男性は相撲の力士に代表される。確かにBMIだけを見ると超肥満に見えるが、CT検査で脂肪のつき具合を見ると、内臓脂肪は少なく、筋肉が多い。大半は皮下脂肪が多い肥満であり、コレステロールや血糖値には問題が無い力士が多い。摂取するカロリーは普通人と比べ2〜5倍も多いが、厳しい稽古によって内臓脂肪が消費され、皮下脂肪だけ溜ったCT像がみられる。  

脂肪組織の今昔  
石器時代、人間は狩猟をして獲物を捕えなければ、生きていけなかった。又、次の獲物を得るまで食い溜めする必要があった。そのため脂肪は生き延びるためのエネルギーを貯蔵する重要な役目を有していた。しかし飽食の時代の今、脂肪組織の役目は劇的に変り、内臓脂肪が増えることで、かえって動脈硬化や糖尿病など病気を招く結果となっている。  

脂肪細胞の働き  
最近脂肪に対する考え方が大きく変った。以前は脂肪細胞は単なる中性脂肪の貯蔵庫と考えられていた。ここ10年余りで、脂肪細胞は体の代謝を調節する非常に重要な生理活性物質を分泌している事がわかってきた。内臓脂肪が分泌する生理活性物質には体に良いものもあれば体に害を及ぼすものもある。内臓脂肪が増えるとTNF―アルファの分泌量が増える。するとインスリンが効きにくくなり、インスリン抵抗性が高まり血液中の糖が使われないまま増えて高血糖となり糖尿病を引き起す。またアンジオテンシノーゲンの分泌量も増え、血圧を上げたり、血栓を作るPAI―ワンの分泌量も増える悪さもする。コレステロールにも影響を及ぼし、動脈硬化を促進する中性脂肪が増え、善玉コレステロールが低くなる。一方脂肪細胞は動脈硬化を抑える善玉のアディポネクチンを分泌して健康にとって良い働きをしているが、脂肪細胞が増えるとアディポネクチンの分泌を減らして動脈硬化を促進してしまう。  

内臓脂肪を溜めない生活  
内臓脂肪がなぜ溜るのか、全て明らかになっているわけではないが、食事や運動等の生活習慣が深く関っているのは確か。
 体内で消費されずに余ったエネルギーは脂肪細胞に蓄えられる。従って必要以上のエネルギーを摂り続けていれば脂肪細胞はどんどん大きくなる。近年わが国では肥満の男性が増加傾向にある。一方女性は食事やカロリーに気をつけている人が多く肥満者の増加傾向はみられない。
 蛋白質と炭水化物は1g当りのエネルギー4キロカロリーに対し、脂肪は1g当り9キロカロリーと倍以上。脂肪を沢山食べればそれだけ総カロリーは多くなるので要注意。
 アルコールのエネルギーは体内で熱を産生するのに使われるので晩酌程度の量なら問題ない。普段の生活が夜型の人では寝る前にたくさん食べればどうしても太り易くなる。
 また運動不足だと内臓脂肪が溜り易く、逆によく運動すれば皮下脂肪より先に内臓脂肪が減っていく。生活習慣の改善は根気よく、長く続ける事がポイントで、体重、ウエスト径等メモしておくのが励みにもなる。