2012.10月号より

『 1日 15 分の運動で寿命が延びる 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


アンチエイジングについて本誌4〜7月号に記述した。結局アンチエイジングの基本は適切な食事、快適な生活と運動が重要。しかし運動に関 してはどの位運動をしたら良いか 、 また運動が寿命にプラスになるかは明確な答えはなかった。

 WHO(世界保健機関)は1週間に 150 分の運動を勧めている。1日 30 分として週5日は運動しようということ。統計によればWHOの運動基準を満たしている人はアメリカ人では3分の1だが、日本では5分の1位しかいないようだ。運動するにしても「しっかりやらないと意味がない」という一方で「歩くことだけだっ て価値がある 」 という議論もあり 、 なかなか納得できるものは少ない。

 最近アメリカの権威ある医学雑誌(LANCET)に「1日 15 分の運動でも死亡率を下げ、寿命を長くする」という興味ある論文が発表された。

 この論文でウエン先生は台湾で暮す 20 歳以上の健康成人約 42 万人(男性 48 %、女性 52 %)を対象とし、楽しみながら毎日運動を続けている人達の健康状態を8年以上も追跡調査し 、 全然運動しない人達との死亡率 、 寿命を比較した。

  図1

 図1に毎日の運動時間と死亡率の減少の関連を示す。運 動の強さは歩行程度の運動を 「 弱 度」、速めに歩く運動を 「 中等度 」、 ジョギングを 「 強度 」、 ランニングを「最強度」とし、運動を1日に 15 分する人達と全く運動をしない群と比較した。早めに歩く「中等度」の運動を毎日 15 分行っ ただけで死亡率は 14 %も減少した 。 そして寿命は3年延長した。毎日 15 分の運動を追加すると更に死亡率は 20 %減少した。運動時間が毎日 60 分では死亡 率減少率は 29 %にまで減少したが 、 毎日 90 分の運動時間でほぼ上限に達したのでこの辺りが運動の限界のようだ。

  図2

 図2に運動強度を弱度、中等度、強度、最強度に分けて運動を「しない」群と死亡の危険度を比較した。運動しない群を 1.00 とすると運動を強くするに応じて死亡の危険度は減少傾向が見られた。ちなみに中等度の運動では癌での死亡率は 0.80 、循環器系での死亡率 0.84 、糖尿病系死亡率は 0.77 とすべての疾患における死亡の危険度は減少した。   

 この論文では軽めの運動している人でも毎日 15 分 運動を追加すると死亡率は更に下り、癌による死亡、心臓病での死亡、糖尿病 による死亡でも同じであった。最終的には1日 90 分程度の運動でピークに達し、それ以上運動しても健康へのメリットはほとんどない。ほんの一寸の運動でも効果はあるが、もっとやればそれだけ健康にプラスになるのが結論のようだ。