2011.10月号より

『 日常生活と放射線不安 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


先般野菜に次いで牛肉から厚生省の規制値を越える濃度のセシウムが検出され、日常生活の中で一般に放射線に対する不安感が広がっている。不安感を払拭し、風評被害を少なくするためにも放射線のリスクを正確に評価することが肝腎。

  シーベルト(Sv)とベクレル(Bq)
  シーベルトとは放射線による人体への影響の度合いを表す単位。放射線の種類や体の部位などによって変る影響の強さを補正して算出する。ベクレルとは放射性物質が放射線を出す能力を表す単位。シーベルトで表すには元素や身体部位などによって異なる係数を掛けて算出する。

  被爆線量とリスクの関係
  国際放射線防護委員会(ICRP)は被爆線量とリスクについて規制値を定めている。それによると、1000ミリシーベルト(mSv)の被爆で一生涯の中で癌による死亡者は5%上昇する。100mSvなら0.5%増え、10mSvなら0.05 %と線量とリスクは直線的関係にある。福島医大副学長の山下俊一先生は100mSvの放射線を、累積で、緩徐に受けた場合には生涯癌死亡リスクが0.5%増えることだと説明している。例えば30歳の日本人の生涯癌死亡率は20%なので、癌による死亡率は100mSvでは20.5%に増えることになる。100mSv以下のリスクは現時点では不明であり、100mSv以下では健康への影響はほとんどないものと考えられる。

  8時間外出する日常生活での放射線リスク
  福島市では原発の水素爆発後の放射線量は8.96mSvが測定され、1ヶ月後1.67mSv、5ヶ月後では1.13〜1.18mSvと漸次下降している。現在仮に1.2mSvの環境で1日の中で8時間外出し、16時間屋内生活をするパターンを1年間続けるとしたら、1年間では約6.31mSvとなる。この値は100mSvで0.5%の生涯癌死亡リスクが上昇する基準値よりはるかに低い。

  食品の放射線リスク
  日本人は牛肉を年間9.3s食べているが、仮に測定された放射線レベルの牛肉を年間10s食べたとしても0.52mSvである。野菜の規制値1s当りは500ベクレルであり、仮に500ベクレルの野菜を1年間100s食べたとしても0.65mSvである。水は規制値1リットル当り200ベクレルであるが、年間を通して1日2リットルを1年間飲んだとしても1.90mSvである。
  今秋収穫を迎える主食の米については、1キロ当り5000ベクレル以下の土壌では作付けが認められているので、ごく微量のセシウムが検出される可能性はある。京都医療科学大学遠藤啓吾教授によれば穀類の基準値は1s当り500ベクレルと設定されているが、セシウムはぬかの部分に多く蓄積されるので、精米して白米で食べるときには約6割のセシウムが除去される。日本人の米の年間平均摂取量60sとすると、1年間で0.15mSvとなる。これらの放射線量は東京―ニューヨーク間を航空機で往復する際に受ける自然放射線量約1.19mSvに比較しても低いので安全と考えてもよいのではないか。

  放射線量が高い場所、低い場所
  原発事故による放射線汚染の程度は事故現場から遠くなるにつれてだんだん低くなっていくとは限らずに、離れた場所でも高濃度汚染のホットスポットがある。これは原発の水素爆発によって発生した気体状、粒子状の放射性物質が漏れて、大気とともに雲のように流れる(放射性プルーム)のがその原因。放射性プルームが上空を通過すると、その地点の空間線量は一時的に高くなる。地形や風向き、降雨などの影響で降下する場所がある。結果的に放射性物質が地表面に沈着し、その地点の放射線量が高くなる。場所によっては徹底的な除染対策を必要とすることになる。