2011.9月号より

『 放射線被ばくの健康対策 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


 県民健康管理調査計画に基づき実施された 浪江 、 飯館、山木屋地区での内部被ばく調査によれば、セシウム 134 では 109 人中 52 人( 48 %)、セシウム 137 では 32 人( 29 %)、両方検出は 26 人( 24 %)であった。何れも摂取後 50 年間(子供では 70 年間)に受けると想定される放射線総量は1ミリシーベルト以下の結果であった。体内に入ったセシウム 137 の放射能の半減期は 30 年と長期だが、実際は体の中で尿などから排泄されるので成人では 50 〜 100 日、 5 〜 14 歳では約 20 日、 1 歳児では約8日で放射線量は半減する。このデーターからは内部被ばくの健康問題はなさそうだ。

 日常生活の放射線被ばく

 @外部被ばく

 放射線は医療や原子力発電炉など人間が作り出す特殊な環境だけではない。日常生活の中にも様々な自然放射線がある。宇宙から飛んでくる宇宙線、地球誕生の時から地殻に存在する放射性同位元素から発生するもの、大気中のラドンなどである。

 人間が日常生活で自然に浴びている放射線は1年間に宇宙から 0.39 、大地から 0.48 、食物から 0.29 、場所によるが空気中のラドンから 1.26 、計 2.42 ミリシーベルトと計算できる。胸部X線集団検診で 0.05 、CTスキャンで 6.9 ミリシーベルトの放射線を受ける。東京―ニューヨーク往復航空機旅行では 宇宙線は 0.2 ミリシーベルトとなる 。 日本では一般公衆が浴びる人工放射線量の限度は一年間に1ミリシーベルトとされている。

 A内部被ばく

 現在食品中の放射性物質が健康に与える影響については、データーがないのに等しい。食品安全委員会は食品の被ばくが健康に与える影響を広島・長崎の原爆被爆者を対象とした研究で 100 ミリシーベルトを超えると癌のリスクが高まることを確認、外部・内部被ばくを合わせた生涯の累積線量を 100 ミリシーベルトまでに抑えるべきとする見解を発表し問題を提起した。国際放射線防護委員会( ICRP )では被ばく線量が 100 ミリシーベルトを超えると癌で死亡するリスクが 0.5 %高まるとしており、ほぼ同様の見解である。

 放射線による健康被害の実体

 放射線は体の中でフリーラジカルを発生する。フリーラジカルは生体を酸化、錆びさせ、細胞や遺伝子のDNAを傷つける。一方身体の持つ防御機能としてはSODやカタラーゼという酵素がフリーラジカルを消去し、細 胞や遺伝子を修復する 。 しかし実際には生体の防御はこれで十分という訳にはいかない。

 放射線被ばくの健康被害対策

 現時点では放射線被ばくによる健康被害の特効薬はないのが実情。

 アンチエイジング医学を研究している点滴療法研究会は、低濃度放射線被ばくによる健康被害を自ら防ぐにはビタミンCを中心とする抗酸化物質の摂取が必要で、高濃度放射線被爆環境における作業者などの健康を守るには高濃度ビタミ ンC点滴療法導入を提唱している 。 ビタミンCは強力な抗酸化物質として放射線障害を防ぐことが知られている。防衛医科大学の研究者らが 1979 年東海村臨界事故で外部被ばくにより死亡した事例を教訓に、外部被ばくによる致命的な胃腸症候群を防御する研究を行った。ビタミンCがフリーラジカルの生成を抑えることで細胞の DNA の障害を防ぎ、急性放射線被ばくの傷害が緩和されることを立証した。米国や英国などの研究者もビタミンCは内部被ばくの傷害を防御する主旨の報告をしている。抗酸化作用のある栄養素の中で最も補給しやすいビタミンCを摂取することが放射線被ばくと共存する生き方であろうと考えられる。放射線を避けるのも大事だが、ビタミンC摂取による攻めの姿勢も考慮しては如何だろうか。