2011.8月号より

『 ビールが放射線防護に効く 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


広島・長崎の原爆やチェルノブイリ原発事故被害者の中で、アルコール飲料が放射線障害を低減したという噂話があった。最近アルコール飲料が放射能防御効果があるかどうか確かめる研究が行われた。研究を行ったのは放射線医学総合研究所と東京理科大学 薬学部の共同研究グループ である 。 ア ルコール飲料の中から 、 飲み易く、 ポピュラーなビールが選択された。ビール、生理食塩水、エタノール ( アルコール ) 、ノンアルコールビールを4匹のマウス(ねずみ ) に与えた後放射線を照射したが 、 ビールを飲 んだマウスが最も長く生き延びた結果となった。 ビ ールのアルコール分 ( エタノール ) に加え、ビールに溶けこんでいるどの成分に防 御効果があるのか研究が行われた 。

 ビールの放射線防御効果

 ビールを飲む前とビール大瓶一本を飲んだ後に採血した血液に、エックス線又は重粒子線(がん治療に応用する放射線)を1〜6グレイを照射し、ビールを飲む前と飲んだ後の血液細胞の染色体の異常を調べた。(?1グレイのエックス線やガンマ線が全身に均等に吸収されるとすると実効線量は1シーベルトになる)その結果は、ビールを飲んだ後では放射線によって生じた血液細胞染色体異常は明らかに少なかった。この結果はビールの放射線防御効果を証明するものである。がんの原因は遺伝子の DNA の損傷であり、放射能等で遺伝子の DNA が何度も損傷されるとがんになる。またビールの効果はアルコール単独の効果より強いこと、ノンアルコールビールでは放射線の防護 効果が認められない事がわかった 。

 外国産でも日本のビールでも銘柄によって多少の違いがあったが、いず れの銘柄でも効果は同様であった 。

 ビール成分の何が効果があるか

 ビールに含まれる成分の中で放射線防護作用を示すのはどの成分か。放射線防護作用を有する可能性のあるビールの微量成分のシュードウリジン、メラトニン、グリシンベタインについて実験した。

•  シュードウリジン

 ビールではサルモネラ菌に発がん性物質を加えた実験でビールが DNA の損傷率を半分に減らした。シュードウリジンは麦芽に含まれ植物、動物に広く含まれている。今回初めて、ビー ルの中に約5?/?含まれており この様な作用のある事がわかった 。

 Aメラトニン

 メラトニンは脳の松果体から分泌さ れるホルモン 。 メラトニンは体温 、 血圧を低下させる事によって醒眠と覚醒のリズムを調整し、自然な眠りを誘う作用がある。時差ぼけ防止にも効果が認められ、体内時計の調節を行っている。メラトニンの放射線防御効果は 1995 年に報告されており、ビ ールには約5?/?含まれている 。

 Bグリシンベタイン

 グリシンベタインは主に砂糖大根から分離精製されているが、エビ、カ ニなどの水産物や麦芽 、 キノコ類 、 果実などにも含まれているもので甘味料として利用されている。心臓病の危険因子であるホモシスチンを減らすことが知られている。ビールには約 80 ?/? 含まれている。

 今後の展望

  放射線防御剤は一般に入手が困難で副作用を伴うものもあり、長期服用にも課題が残る。このためニンニク、朝鮮人参、味噌などについても研究されている。飲酒により放射線障 害が軽減されたなどの体験談から 、 飲みやすいビールに着目研究が行われた。福島原発の事故では、「直ちに健康に害を及ぼさない」といくら繰返されても不安が残る。ビールを飲んでいれば万事オーケーという訳にはいかないが、ビールの効果の可能性は確かのようだ。一杯やって元気をつけるのもいかがかな。