2010.11月号より

『 歯周病 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


歯周病とは

 歯肉が腫れたり、出血したりして歯が抜けてしまう病気の統称を歯周病と呼んでいる。初期には自覚症状がほとんどないので気づかない人が多い。実際には日本人の成人の約 80

% がかかっているともいわれている 。

 歯周病とは歯周病菌が食べ物の残りかすを栄養として増え、歯垢(プラーク)となって歯と歯茎のすき間(歯周ポケット)にくっつき、炎症を引き起す病気。だんだん歯茎がやせて来て、最後は歯茎の下の骨(歯槽骨)まで溶かされてしまい、歯が抜け落ちる。歯周病は治療しないで放っておくと全身的にもインスリン抵抗性が悪くなって、糖尿病が悪化し、歯周病も更に進行するという悪循環に陥る。滋賀医大付属病院のデーターによれば糖尿病患者 133 人のうち 93 %に歯周病がみられ、一般検診に於いても歯周病は 47 %にみられるという結果であった。

 糖尿病との関連

 糖尿病になると身体の抵抗力が低下するので様々な合併症を起す。糖尿病の人では、細菌に感染しやすくなり、歯周囲組織はプラークの歯周病菌に侵され易くなり、また治りづらいことにもなる。

 糖尿病の三大合併症

 糖尿病を放っておくと 10 〜 15 年後には特有の合併症が発症する。まず糖尿病神経障害では手・足の痺れがみられ、けがややけどなどでも痛みを感じなくなる。筋力の低下、立ちくらみ、発汗異常、インポテンツなど自立神経障害が現われる。また目の奥にある網膜の血管が悪くなり、視力が弱くなったり、中には失明に至る糖尿病網膜症がある。更に尿をつくる腎臓の糸球体がやられ、尿が出なくなる糖尿病腎症がある。病院で週 2 〜 3 日人工透析が必要となるケースもある。現在人工透析になる原因の1位がこの糖尿病腎症。

 脳梗塞・心筋梗塞との関連

 歯周病は決して口腔衛生だけの問題だけではない。脳梗塞や心筋梗塞などの原因と密接に関連している。歯周病の人は脳梗塞を含む脳卒中は約3倍増加。心筋梗塞など約 1.5 倍増加という研究結果もある。

 糖尿病の三大合併症は高血糖により 細い血管が傷められることが原因 。 し かし高血糖は細い血管だけでなく 、 太い血管にも動脈硬化がより進行しやすくなっているので動脈硬化は糖尿病のもう一つの合併症。動脈硬化は血管の壁が硬くなり血管が細くなり血液が流れにくくなる病気。血流が途絶えると、そこから先には酸素や栄養の供給が止り、細胞の働きが停止してしまう。狭心症、心筋梗塞などの心臓病や脳梗塞は動脈硬化が原因で発症する。

 また糖尿病の合併症の一つに足の壊死があるが、これも動脈硬化が原因。

 歯周病が心膜弁膜を壊す

 歯周病がひどくなると歯茎から膿が出る。そこから病菌が血管内に入り込み全身を駆け巡る。病菌が心臓弁膜特に大動脈弁や僧帽弁にとりつくと弁膜はボロボロになり、血流の逆流(閉鎖不全症)が起る。逆流が高度となれば心不全に陥り、緊急手術が必要となってしまうケースもある。他にも病菌が全身にばらまかれて敗血症となり、重症となる危険性が大きい。

 歯周病は予防が大事

  歯周病予防の基本は歯磨き。歯周病の原因である歯や歯の周りに付着した細菌・歯垢を取り除くことである。歯ブラシは毛先をきちんと当てて、軽い力で小刻みに動かすことがポイント。 80 才で自分の歯が 20 本残る「 8020 運動」が目標。口内健康が全身に及ぼす影響をふまえ、早期歯科診療をおすすめしたい。食べる楽しみ を満喫 、 大いに生活を楽しみたい 。