2010.5月号より

『 テロメア 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


 テロメアは生命の回数券

 体を構成している細胞には寿命がある。この細胞の寿命を刻んでいるのがテロメアと呼ばれている物質である。 2009 年のノーベル生理学・医学賞の研究テーマはこのテロメアであった。エリザベス・ブラックバーン教授、キャロル・グライダー教授、ジャック・ショスタク教授という二人の女性を含む三人のアメリカ人教授がノーベル賞に輝いた。

 テロメアは人間や動物などの身体を構成している細胞の染色体の末端にある特殊な構造のDNAである。テ ロメアが 「 生命の回数券 」 とか 「 老 化時計」とか呼ばれる。この訳は人間の細胞には分裂できる回数に限界があり、これを超えると細胞は増殖を止め、老化細胞となってしまうためである。テロメアの残りが限界に達すると細胞分裂が停止してしまい細胞は死んでしまう。つまりテロメアがあとどの位残っているかがわかると、人間や動物があとどの位生きられるのか予想できるという事になる。

 クローン羊ドリー

1997 年にクローン羊は六歳の成羊の体細胞から生まれ、大きな話題となったのを記憶されている方もおられるでしょう。生まれたばかりのドリーのテロメアは正常繁殖の羊より約 20 %も短く、一歳のドリーはすでに正常羊の六歳の短さになっていた事実があった。羊の寿命は十〜十五歳である。ドリーは早期の老化現象のた めに六歳七月の短い一生であった 。 テロメアをコントロールできれば老化現象を防止したり、がん細胞をやっつけたりする事もできると研究者の間で期待が寄せられている。

 テロメア温存が長寿の秘訣

 テロメアは人間の細胞一ケ当り 92 存在する。その中の一ケでも一定の長さより短くなると細胞分裂は停止する。逆にいえばテロメアの短縮を止めれば、DNAは安定し、ひいては不老長寿につながるという訳である。テロメアをつくり出すテロメラーゼという酵素の働きが活発になると、テロメアが長くなるので細胞分裂が繰り返され、寿命は長くなる。しかし細胞が無制限に分裂し続けるがん細胞は細胞レベルでは不老長寿となって、人間の寿命を短くするから皮肉な話である。

 加齢と老化は異なる

 誰でも年齢が加われば老化現象は起ってくるが、加齢と老化はイコールではない。老化のスピードを速める原因の一つは遺伝子であるが、食生活やライフスタイルも関係している。代々短命の遺伝子を受継いだ家系だとしても食事に気をつけ、適度な運動習慣を取り入れたライフスタイルを心掛ければおのずと長寿を手に入れることも可能となる。

 テロメアの敵―活性酸素

 体が元気ということは、すべての細胞に酸素と栄養が行き渡り、尚余分な活性酸素を打ち消すと細胞は酸化されず元気でいられるということである。活性酸素が LDL コレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪を酸化して血管を硬くし動脈硬化を起してしまう。動脈硬化は心臓病や脳卒中の元凶である。体内の活性酸素を増やす原因のワースト3はストレス、紫外線、タバコである。その他にも大気汚染、放射線、激しい運動などがある。活性酸素を打ち消す栄養素はビタミンCとEである。ビタミンCは体内の水分の中で、ビタミンEは脂肪の中で活性酸素をやっつけてくれる。激しい運動は活性酸素を増加させるので、無理のない有酸素運動を続けるのがポイントである。またテロメアは過食、肥満、動脈硬化などメタボリックシンドロームの状態では大量に失われてしまう。健康で長生きする秘訣はテロメアの温存を心掛けることです。