2009.3月号より

『 痩せりゃいいの? 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


メタボ健診のねらい

 わが国ではここ 30 年間にわたる高血圧対策が効を奏し脳卒中及び心筋梗塞の死亡率が低下した一方、働き盛りの男性の肥満度(BMI)、中性脂肪値の上昇 、 糖尿病は増加傾向にある 。 このような現状をふまえ、肥満の積極的なコントロールによって高血圧、高脂血症、糖尿病を改善し、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを低下させようとする狙いで本年四月 より メタボ健診がスタートした が 、 メタボの予防・管理については幾多の課題も指摘されている。

 肥満の基準

 わが国のメタボ診断の基準とくに肥満の指標とした腹囲についてはその妥 当性をめぐって議論が続いている 。 問題点は@腹部肥満を必要項目とすべきかA必須項目とすると、その指標は腹囲測定でよいのかB男女別の基準をどのように設定するか等である。米国NCEP - ATPVでは腹囲は診断項目の一つであるが、必須項目ではない。また国際糖尿病連合(IDF)では腹囲を必須項目としているが、アジア人向けの腹囲基準は男性 90 p 以上 、 女性 80 p 以上とし 、 現在の日本基準の男性 85 p以上 、 女性 90 p 以上と比較し男性にやや甘く 、 女 性にややきつい基準となっている 。

 腹囲測定の落し穴

 我が国のメタボの診断基準では内臓脂肪の蓄積が必須条件となっている。下腹部、腰のまわり、太もも、おしりのまわりの皮下に脂肪が蓄積するタイプ「皮下脂肪型肥満―洋ナシ型」は外見からはっきりわかる。これに反し内臓のまわりに脂肪が蓄積するタイプは「内臓脂肪型肥満―リンゴ型」で、外見からははっきりしないことがある。悪さをする内臓脂肪型肥満を簡単に調べる方法は腹囲 を測ることであり 、「 へそまわり 」 を正確に測ることである。腰の一番細 いところを測ることではないので 、 注意しなければならない。腹囲が基準値以下であっても、内臓脂肪が多い「隠れ肥満」もあり、腹囲は必ずしも肥満を測るバロメーターとして適当とは限らない。非肥満とされるBMI 25 未満の人でも内臓脂肪面積が 100 ?以上の隠れ肥満者が 27 %も存在したというデーターもある。

 内臓脂肪を厳密に測る方法は腹部CT検査を行うことである。CT画像で内臓脂肪の断面積 100 ?は腹囲の基準値であり、その増減は最も信頼できる測定法である。

 隠れ肥満に御用心

 肥 満はBMIという指標が使われ 、 体重(s)を身長(メートル)で2度割った数字で表わされる。日本人では 25 以上が肥満、 30 以上が著しい肥満とされている。

 日本では糖尿病患者が2000万人を突破し、生活習慣病の危険な実態をみせている。イギリスやアメリカの糖尿病患者のBMIは平均 29 〜 32 であるが、日本人では 23 前後で一般人とほぼ同等というデーターがある。BMIや腹囲の測定結果だけで安心するのは危険である。メタボ対策でターゲットとするのは肥満よりもお腹の中の臓器まわり にある内臓脂肪であるべきである 。 内臓脂肪から出る物質が代謝に影響を 与え健康を損っているからである 。 メタボ検診の結果だけで隠れ肥満、隠れ糖尿病を見逃してはならない。

 痩せていても油断は禁物

 最近の大阪大学磯教授の研究によれば、生活習慣病である高血圧、高脂血症、糖尿病などの危険因子が集積すると、痩せている人でも、肥満のある人と同様に心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクが大きくなるという。特に高血圧は男性でも女性でも脳梗塞の発症リスクが3〜4倍にも増大するという結果であった。肥って いないといって油断は禁物である。