2008.11月号より

『 タバコの功罪 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


タバコのルーツ

1492 年黄金の国ジパングを目指し、大西洋を西に向ったコロンブスは苦しい航海の末西インド諸島のサンサルバドル島に上陸した。先住民から贈物の返礼として「香り高い乾燥した葉」をプレゼントされた。これがヨーロッパ人がタバコに接した最初である。日本には南蛮貿易で伝来したとされている。タバコの風習は江戸幕府の禁令にもかかわらず、全国に広がり今日に至っている。

 タバコの功

JT のホームページによるとタバコの味わい、香りを愉しめる、気分的にリラックスする等の功を挙げている。また 「バカの壁」の著者養老先生は 「たばこの害根拠なし」とか 「禁 煙運動はナチズム」だ等と月刊紙の対談で発言している。しかし、「タバコが害だという根拠が無い、という根拠を示せ」という公開質問には答えていない。

 タバコの害

 誰れでもタバコは身体に良くないという共通の印象は持っていると思われる。事実タバコの煙には発がん物質 40 種類が確認されており、統計的にも非喫煙者と比較すると喫煙者で はがんによる死亡率 は 1.7 倍も高い。特に喉頭・咽頭がん、肺がんばかりでなく食道がんや子宮がん、膀胱がんによる死亡率も高い。

 肺はスポンジのような肺胞と呼ばれ る小さな空洞を有する臓器である。 タバコは肺胞を壊してしまうので充分な換気ができなくなる肺気腫に進展する危険があり、息切れ等の症状が起って来る。平地を歩いても、更には話するのも苦しくなり一日中咳や痰が出るような状態となる。

 またタバコは心筋梗塞、狭心症、脳卒中、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化を起こす最大の危険因子でもある。

 タバコの副流煙は周りの人に迷惑

 タ バコの煙にはニコチン(依存性、 神経・血管障害を起こす)、タール(発癌性)、一酸化炭素(細胞毒)などの有害物質が含まれている。タバコの煙を直接吸い込む主流煙よりも、火のついた部分から立ち昇る副流煙を吸い込むと有害物質は2〜4倍 以上多く吸い込まれることになる。 この受動喫煙は周りの人達に強制的に、より害の多いタバコの煙を吸わせることになる訳である。

 タバコ嗜好は衰退傾向

 世界主要国の喫煙率は 2002 年ドイツ

・フランス・オランダ等では 33 〜 35

%と依然高い。日本では 男 40 %、女 10 %で平均 24 %で あるが、 60 年 代には 男 80 %超 だった喫煙率は半分に減った。アメリカでは 60 年代にタバコの害を証明した報告書の発表以来男 28 %女 24 %と激減した。現在喫煙率を下げ、受動喫煙の機会を減らすためタバコの値上げが問題になっている。ちなみに一箱の値段は英国やニューヨークでは千円前後である。日本では 300 円と安価であるが千円に値上すれば喫煙者は半減すると予想されている。

 禁煙は最も効果的な安い健康法

 現在最も確実な効果を期待でき、意志さえあれば実行可能なそして安価な健康法は禁煙することである。禁煙すれば速やかに脳卒中、心筋梗塞の危険性は低下する。肺機能は回復し息切れは改善する。がんの予防は即時的な効果は難しいが効果は5〜 10 年を要するが明白である。

 禁煙への道

 喫煙は「依存症」という病気である。ニコチンの禁断症状は数日間がヤマで以後は消失する。しかし精神的依存は残るのでタバコを吸いたい欲求は続く。そこで一本位はいいだろうと吸うと簡単に元に戻ってしまう。禁煙の補助としてニコチンガムは或る程度有効と思われる。ニコチンパッチなども有効であるが、最終的 には本人次第というところである。