2008.8月号より

『 増え続ける糖尿病(その2) 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


糖尿病は静かなる殺し屋

 糖尿病は症状がないまま進行し、遂には命取りになることから欧米ではサイレントキラー(静かなる殺し屋)の別名をつけられている。

 糖 尿病は放っておくと失明したり、

腎臓の機能が悪化して血液透析が必要になったり、心筋梗塞を引き起したり、足が壊疽(腐ること)になったり、そしてついには死に至る重大な病気である。

 糖尿病のもたらす弊害

 血糖値の高い状態が慢性的に続くと体の細胞はかなりのダメージを蒙る。筋肉、血管、神経、血液などの細胞はすべてタンパク質でできている。ブドウ糖はこれらのタンパク質とくっつきやすく、一度くっつくとな かなか離れない性質をもっている。

ブドウ糖がついた細胞は壊れやすくもろい細胞となる。血管は常に高血糖にささられるとボロボロになってしまう。

 その結果として目の障害(糖尿病性網膜症)、腎臓の障害(糖尿病性腎症)、神経の障害(糖尿病性神経障害)等が糖尿病の三大合併症を引き起してくる。

 失明に至る糖尿病性網膜症

 目の網膜はカメラの感光部分、フィルムに当る。網膜には細小血管が張りめぐらされているが、高血糖が慢性的に続くと破れやすい状態となる。糖尿病性網膜炎は糖尿病の発病直後に起るものではなく発病後 10 年経過頃から起ってくる。成人の失明原因の第一位を占めている。

 人工透析が必要な糖尿病性腎症

 尿をつくる濾過装置である腎臓の糸球体が、糖尿病によって機能が悪化し、老廃物を十分濾過できなくなり、タンパク尿が現われてくる。放置すると多くの場合は数年のうちに 腎不全となり、尿毒症に発展する。 ここまで重症となると人工透析(腎臓の機能を代行する治療法)か腎臓移植をしなければならない状態となる。人工透析が必要となる原因の第一位はこの糖尿病性腎症である。

 多彩な症状の糖尿病性神経障害

 糖尿病性神経障害は末梢神経が侵されて起るもので比較的早期からみら れる。「手足のしびれや痛み」「下 痢 や便秘をくり返す」「立ちくらみ」 「発汗異常」「インポテンツ」が主な症状である。神経障害による知覚低下のため、外傷ややけどに気づかず、発見、治療が遅れて化膿してしまうケースがよくみられ、このために生ずる足の潰瘍から壊疽となることがある。

 フットケアは重要

 糖尿病では末梢の温度感覚などの知覚が障害されるので熱いものに触れたり、足をケガしてもわからず化膿してしまうことがある。

足を守るためのフットケアでは足のひび割れ、靴ずれ、水虫、爪の伸びすぎをよく観察すること、蒸れやすい靴を避けること等が大切である。

 糖尿病は動脈硬化の起爆剤

 高血糖は動脈硬化を促進する。動脈硬化は老化現象の一つではあるが糖尿病では硬化の進行が 10 年早い。硬化が進むと血液の流れを障害するため心筋梗塞、脳梗塞、胸部や腹部の大動脈瘤を引き起してくる。

 食生活の改善と運動習慣が鍵

 糖尿病は膵臓からのインスリン分泌が不足したり、働き方が弱くなることで起るわけであるから、インスリンを有効に使うことを考えることが大事である。具体的には一日の総摂取カロリーを必要最小限にすること、そしてその範囲内で栄養バランスのとれた食事をすること及び運動習慣を続けて少ないインスリンの働き を助けてやることがポイントです。 糖尿病は治すことはできないがコントロールできる病気です。確実に実行すれば人と変らない人生をエンジョイすることができます。