2008.7月号より

『 増え続ける糖尿病(その1) 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


成人 5.6 人に1人は糖尿病

 厚生労働省の '06 年国民健康調査によれば、成人の糖尿病患者と予備軍の総人数は約千八百七十万人(男性 47 %、女性 53 %) と推計されている。 これは総人口の約 15 %を占め、 成人 5.6 人に1人は糖尿病であり、今や国民病の様相を呈して来た。4年前の前回の健康調査よりも二百五十万人が増加しており、このうち女性が二百万人と大半を占めている。

 年代別にみると 70 歳以上 35 % 60 代 29 %、 50 代 23 %、 40 代 14 %、 30 代 4

%中高年になる程その頻度が高い傾向がみられる。

 痛くもかゆくもないのが糖尿病

 糖尿病とは血液の中に含まれるブドウ糖の量、つまり血糖値が異常に高 い状態が慢性的に続く状態である。 血 糖値が上昇するとのどが渇いたり、 尿の回数が多くなったりするが、糖尿病は痛みやかゆみなどの自覚症状がないので、知らぬまま放置している人が多い。しかし糖尿病は進行すると、手足のしびれ、知覚の低下、壊疽(腐ること)、筋肉の萎縮・筋力低下、更に失明したり、血液透析が必要になったりすることがある。

 糖尿病の本体

 スポーツをやったり、考えごとをしたりするエネルギー源となるのはブドウ糖である。ブドウ糖をエネルギーとして使うためには、インスリンの力を借りて、筋肉などの細胞のひとつひとつに効率よく取込む必要がある。糖尿病ではインスリンの分泌低下が起るかもしくはインスリン低抗性のため血糖値のコントロールができず、高くなってしまうのが糖尿病の本体である。

糖尿病はT型とU型に大別される。U型は全体の 95 %以上を占めインスリン分泌障害とインスリン低抗性がからみあって起り、T型は膵臓のインスリンを出す細胞の破壊が原因。

 血液検査の読み方

 糖尿病の判定は、随時血糖値 200 mg/dl 以上、空腹時 126 mg/dl 以上、 75 グラム糖負荷試験で2時間値 200 mg/dl 以上のいずれかに該当する場合に糖尿病と判定される。正常人では空腹時血糖値 100 mg/dl 未 満、負荷試験で 140 mg/dl 未満である。 またヘモグロビン A1c 検査では 5.8 〜 6.5

%が正常範囲であるが、この検査では過去1〜2ヵ月間の血糖値の状態を知ることができる。

 生活習慣病のもとは過食と運動不足

 現代は飽食の時代と云われ、脂肪分の多い食事、食べ過ぎの上に運動不足、仕事・人間関係等のストレスが原因で肥満は増加傾向にある。インスリン低抗性は肥満が原因の一つと考えられ、若年者にも増えつつある。肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病はインスリン低抗性が具体的な病気の形となって姿を現わしたものとも考えられる。海に浮かぶ氷山に例えればインスリン低 抗性は水面以下にある氷の部分で、 姿が見える部分が生活習慣病であるとも云える。従って肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症を個々に対処し治療しただけでは根本的な解決とはならず、食生活の改善や運動習慣をつけるなどの健康管理が必要とされるわけである。

 糖尿病から身を守る

 糖尿病は運動不足、高カロリーの食生活が大きな要因となっている。厚労省は国民の一日平均歩数が 1000 歩増えれば、糖尿病の発症が 10 年間で3%減らせると試算している。企業の健保組合を対象に一歩の値打ちをポイント化して蓄積できる「ウォーキングマイレージ」という事業を提案している。生活習慣病と予備軍を 25 %減らすことで 25 年後の医療費を2兆円減らせると皮算用している。

 糖尿病の健康管理は今や個人の問題にとどまらず、国家の医療経済にとっても大きな課題となっている。