2008.6月号より

『 メンタルヘルス−心の健康 』

社会医療法人福島厚生会
理事長  星野 俊一


メンタルヘルス―心の健康

 現代社会は経済のグローバル化、コンピューター化、ロボット化等かつて見ない程の大きな変化にさらされている。終身雇用制・年功序列制の崩壊、雇用形態の不安定化、ワーキングプア等で働く人達のストレスは増加し、メンタルヘルスの問題が深刻化しつつある。

 企業内でのメンタルヘルスの不調は5〜7割ぐらいがうつ病・うつ状態とされているが、アルコール依存症・統合失調症もみられる。最近では人間関係や経済的な問題をうまく処理できず、うつ状態や不安状態に陥っているケースが働き盛りの年代に多くなって来ている。

 職場のメンタルヘルスに関して精神障害に係わる労災請求件数はバブルの崩壊、大型倒産が相次いだ平成 11 年頃よりうなぎのぼりに増加し平成 17 年には全国で 656 件に達し、自殺者も増加している。

 自殺者は平成 10 年以降全国で年間3万人を超え、交通事故死の3倍以上にも達している。自殺者のうち勤働者は八千〜九千人で、うち男性は4分の3を占め、 40 〜 60 歳の働き盛りに顕著である。福島医大法医学平岩教授の自殺検死記録によると、最近 10 年間に自殺の動機は健康問題より経済問題に変化して来たが、経済生活問題がストレスになり自殺前にうつ状態に陥っていた可能性が高いとし、うつ兆候を主眼とした新たな視点からの分析が必要であると述べている。

 職場のメンタルヘルスが悪化すればうつ病を中心とした心の健康がおかされ長期休業が増え、労働日数の損 失が起り、経済的損失につながる。 また仕事の能率の低下、事故やミスが増加する。ILOの報告ではアメリカのビジネスマンの休業は年間延べ2億日、医療費は 300 億〜 400 億 ドル、 又WHOは 世界人口の3〜5%がうつ病と推定 、その数は三億四千万人と推測している。

 病気等の障害のためにどの位健康な人生が失われたかを算出する指標であるDALYsでみると、うつ病は失明や下半身麻痺と同じレベルとされている。うつ病は又その人の人生にとっても大いなる損失である。

 職場における具体的な対策としてまず一次予防として仕事の負担の軽減を企ること及び仕事面で裁量の自由度を上げること等で仕事上のストレスを減らす、また日常の生活習慣を見直し、体調を整え、ストレス耐性を高めることが大切である。二次予防としてメンタルヘルス不調に対して、カウンセリング、必要であれば適切な治療の機会を与えることが必要です。最近比較的副作用の少ない薬剤も開発されましたが、まずゆったり と充分な休養をとることが基本 です。 「頑張れ」とか「しっかり」

は禁句で、本人は頑張りたいと思っても 頑張れないのがうつ病の特長です 。 三次予防は、職場復帰する際の、 プログラムをつくり、復帰後 の再発を予防することである。

 労働行政研究所によれば企業におけるメンタルヘルス不調者は増加傾向にあり、直近5年間で 55 %の増加をみている。年代的には 30 代が最も多く 52 %、一 ヶ月以上の休職者がいる企業 は 51 %から 63 %に増加している。また完全復 職した社員の割合は半分程度 23 %、9割以上 20 %であった。企業におけるメンタルヘルス対策として相談窓口の設置、カウンセリング制度や管理職に対するメンタルヘルス教育を実施している企業においてはメンタル不調者の職場復帰率は高い傾向にある。

 つまり各個人にあってはストレスを溜めない或は回避する工夫を、そして組織では、必要な対策を早急に検討実行に移すこと。この事が個人にとっても組織にとっても重要な事

であると考えられる。